誰がために−46


キラは女の子です


「それって、カトー教授が地球軍に協力してたってこと?」



話を一通り聞き終えたミリアリアは、ポツリと言った。

疑問形だが、キラに答えてもらおうというようではない。

そう、キラにだってわかるはずはなかった。



「どうなんだろうね。

 私は、違うって思いたい」

「キラにもわからないのね?」

「ええ。

 全部、仮定の話ですもの。

 ただ・・・、そうね。

 教授がその気なら、もっとそれらしく私に作らせたと思う」

「・・・そうかもね。

 うん、そう思っておこう。

 そんなの、考えたくないもん。

 このこと、みんなにも話す?」

「・・・ちょっと考え中。

 知らないで済めば、その方がいいかもしれないし。

 ミリィには、こうして話したけど」

「当たり前でしょう。

 黙っていたら、怒るわよ」

「それなら、ミリィが黙っていたら、トールが怒るんじゃない?」

「そっちは、いいの。

 それよりも、よ。

 本気で、ザフト軍に協力する気なの?」



口調を改めて、ミリアリアがキラに問う。

真剣な顔のミリアリアに対し、しかしキラはあっさりと答えた。



「もう、始めてる。

 でも、軍に協力してるつもりは無いわ。

 アスランのためよ。

 アスランが、乗るから。

 そして、アスランがここにいるから」

「でも、それって同じことでしょう?

 モビルスーツは、兵器よ。

 戦争の、道具だわ。

 私達は、中立なのに・・・」



***



一人になった部屋で、キラはベットに横たわって、目を開けている。

疲れているはずなのに、眠れなかった。



ミリィの言うことも、わかる。

ううん。

アスランのことさえなければ、私だって。

戦争なんてって思うのに。



ミリアリアは、キラに思いとどまるようにと言う。

深入りするな、と。

理性的に考えれば、その通りなのだ。

軍に関わるべきではない。

戦争にも。



だけど、アスランの役に立ちたい。

傍に、いたい。



いろいろ理由を考えたりしたが、結局キラはアスランの傍にいる理由が欲しかった。

好きと言われて、嬉しくて。

アスランと、離れたくなかった。

既にキラの中では、両親のことを心配する気持ちより、アスランといられて嬉しい気持ちが大きくなっている。

ミリアリア達の救命艇の例もあったけれど、おそらくヘリオポリスの住人のほとんどは、無事にオーブへと向かっていることだろう。

その中には、きっとキラの両親もいる。

無事でいてくれれば、それでいいと、今のキラは思っていた。

両親に早く会うことより、アスランと過ごせる時を、キラは大事にしたい。



ここで別れれば、もう会えないかもしれないなんて、イヤ。

イヤだけど、きっとそうなるわ。

そうよ、戦争がすぐにでも終わってくれるんじゃない限りは。



***



キラが眠れたのは、ベットに入ってかなりの時間が経ってからだった。

それでも目覚ましの音でなんとか起きあがったキラは、ぼうっとしたままシャワールームへと消える。



「・・・ヒッ。

 つめた・・・ぁ」



まだ寝ぼけていたのか、お湯のつもりが水を出してしまった。

頭から冷水を浴び、さすがに慌てて温度を調整する。



「失敗した・・・。

 ううう。

 お陰で目が覚めたけど」



寝起きの悪いキラだったが、今朝は時間通りに起きることができた。

どうやら慣れない環境に、思いの外、キラは緊張していたらしい。



「服、どうしよう・・・」



バスローブを着て出てきたキラは、掛けておいた服・・・軍服を見て、ちょっと考え込んだ。

私服が手元に無いので、キラはこれを着るしかない。

しかし昨夜はミリアリアに見咎められて、変な誤解を受けそうになった。



「でも、他に無いし、すぐ作業に行くんだもん。

 仕方ないよね」



キラは、ため息を吐いて軍服を身に纏った。



*** next

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