誰がために−45 | ||
キラは女の子です | ||
「ミリィ・・・、いない、か。 やっぱりもう、部屋に入っちゃったかな?」 救命艇で来た人々に開放されたラウンジを、キラは見渡した。 そこには既に数える程の人数だけで、その中にキラの友人の姿は無い。 ちょっと肩を落として、キラは自分の部屋へと向かった。 「う〜ん・・・。 こんな時間じゃ、仕方ないか」 明日も朝からアスランと作業をしようと思っているキラは、できれば今日中にミリアリアと話しておきたい。 昨夜は、少々心配を掛けてしまったようだったから。 しかし、もう寝ていたら部屋を訊ねるのはまずいだろうとも思う。 だから、途中にあるミリアリアとフレイの部屋の前でも立ち止まらなかった。 キラは歩きながら、その扉を横目にチラッと見る。 と、キラが顔を前方に戻した瞬間、横でシュンッと音を立てて扉がスライドした。 「・・・キラ!?」 「あ、ミリィ。 よかった、起きていたのね。 ・・・ミリィ?」 一拍置いて声を上げたミリアリアに、振り返ったキラが笑顔を向ける。 キラは足を戻してミリアリアの前に立ち、話しかけた。 だが、ミリアリアは何かに驚いたように答えず、さらには眉を寄せる。 「えっと、・・・ミリィ、どうしたの?」 「キラ、あなた・・・。 その格好、どうしたの?」 ミリアリアの目は、キラの来ている軍服に向いていた。 それでやっと、キラも自分が違う服装をしていたことを思い出す。 あ・・・、と。 このままじゃ、まずかったかな? 「自分の服、どうしたの? まさか・・・?」 「まさかって・・・、え?」 「何か、されたんじゃないでしょうね!?」 真剣な顔でキラに迫るミリアリアに、キラは戸惑って後じさった。 答えないキラに、ミリアリアの目がつり上がる。 「服が、ダメになるようなこと・・・」 「違う! 違うから、ミリィ」 なにか乱暴なことされたんじゃないかと。 そうミリアリアが心配していることを、やっとキラも気づいた。 慌てて、否定する。 それでもすぐには納得しないミリアリアに、キラはさらに言葉を重ねた。 「ほんとに、違うの。 これは、着替えただけなのよ。 ほんとうよ」 「でも、なんでそれ? 軍服でしょう?」 「うん」 こっくりと頷いて、キラも自分の来ている服を見下ろす。 色は違うが、アスラン達の来ているものと基本的なデザインが同じだった。 ミリアリアにも、一目でそれとわかっただろう。 「ちゃんと、理由はあるの。 時間が良ければ、私の部屋へ来ない?」 「うーん、そうねぇ・・・。 でも、もう遅いわよね。 あ、ねぇ、キラ。 明日は、こっちにいるの? それなら、話は明日でも・・・」 「明日は、ダメだわ。 朝から、また行くの」 「また?」 ミリアリアが顔を曇らせた。 そして、心配そうに訊く。 「なにか、あったの?」 「あったといえば、あった、かな? それも含めて、ミリィには話を聞いて欲しいと思うんだけど。 でも、そうね。 もう遅いから」 「行く」 「また、明日に」 「聞くわよ、キラ」 「・・・え?」 「今、聞くわ。 聞いて、欲しいんでしょう?」 「あ、だけど」 「このままじゃ、気になって眠れないわよ」 それで、キラの部屋はどこ?と。 ミリアリアはキラの腕を強引に取り、既に知っているトール達の部屋の方へと歩き出した。 彼らから、キラの部屋も同じ辺りにあると聞いている。 自分を引っ張っていくミリアリアを見ながら、キラはなぜか笑いたくなった。 いや、実際に笑みを浮かべていて、ミリアリアに見咎められてしまう。 「ちょっと、なぁに?」 「なんでもないの」 「・・・変な、キラ」 こういうところ、ミリィとアスランって似ているかも。 優しいのに、時々、ちょっと強引で。 ミリアリアは、女の子らしい優しさを持ち、カレッジでも同性に好かれていた。 けれど、アスランの優しさは、キラ相手に限定されている。 その2人を似ていると思うのは、キラが彼らに愛情を向けられ、キラ自身も彼らのことが大好きだから。 それに気づかず、口に出して言えば即座に否定されただろうことを、キラは楽しそうに考えていた。 *** next |
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