誰がために−43


キラは女の子です


「あ、来た来た」

「ん・・・、アスラン?

 と、・・・あれ、キラさん・・・ですよね」



アスランの機体・・・イージスのコックピットの前に、ラスティとニコルはいた。

2人とも、クルーゼが反対するなど無いだろうと、それぞれの機体をイージスの横へ並べている。

あとはキラを待つだけと、揃ってハッチの上に立っていた。

ラスティが先に気づき、つられて見たニコルは、その横に兵士姿のキラを見つけて首を傾げる。



「へぇ、思い切ったことするな。

 民間人に着せていいのか?」

「隊長でしょう、きっと。

 まぁ、彼女のためにはこの方がいいですよね」

「そうか?

 軍も軍艦もダメなんだぜ。

 軍服も、嫌いだと思うけどなぁ」

「そうですね。

 でも、あれなら誰が見ても、隊長の許可付きってわかりますから」



キラが不審の目で見られにくいだろうと言われ、ラスティもそれに関しては頷いた。



***



「アスラン、遅かったな」

「・・・待たせたか?」

「そうでもありません。

 それより、隊長は・・・」

「ご覧の通りだ」



軍服姿のキラを引き寄せたアスランは、場所を空けたラスティとニコルの間を通り、キラをコックピットへ座らせる。



「イージスに、ブリッツとストライクも繋いであります」

「どうせなら、一気にやった方いいだろう?」



キーボードを引き出したキラは、2人の科白にちょっと考える素振りを見せた。

すぐにアスランが言葉を添える。



「これが、イージス。

 ラスティのがストライク。

 ニコルのが」

「ブリッツです。

 お手数ですけど、僕らのもお願いします」

「はい、頑張ります。

 あ、と、でも・・・いいんですか?

 私が、皆さんのまで・・・」



躊躇いを見せるキラに、ニコルは首を振った。



「違いますよ。

 キラさんに、僕らが依頼しているんです。

 隊長の許可もあります。

 思うとおりにしてください」



でも無理はしないでくださいね、と。

ニコルは、やや口調を改めて付け加える。

気遣いを感じ、キラは微笑んだ。



***



「・・・ラ!」

「!」



突然大声で呼ばれ、キラが体を硬直させる。

が、すぐにモニターに目を戻し、自分が今、おかしなことをしてしまわなかったかを確認した。



「あ、今・・・っ。

 ・・・よかった、なんともない」



ふぅ・・・と息を吐き、キラは力を抜いて背もたれに体を預ける。

そして驚かさせた声の持ち主・・・コックピットの外から見ているアスランを見上げた。



「アスラン・・・。

 驚かさないで、もう。

 びっくりしたじゃない」



キラは拗ねたように言うが、アスランは、実はさっきから何度も呼んでいる。

単にキラの耳に・・・頭に届いていなかっただけだ。



「キラ、そろそろ・・・」

「待って!

 待って、アスラン。

 あと、少しだけ、ね?」

「・・・どのくらいの時間、そうしていたかわかっているか?」

「え?」



もう少しと言いながら、再度キーボードを叩き始めていた手が、また止まる。

アスランの低くなった声に、キラは恐る恐る顔を上げた。

そこには、真剣な目でキラを見るアスランの顔がある。

アスランがキラを心配して言っているのが、キラにもよくわかった。



「でも、急ぐでしょう?

 そう、言ったでしょう?」

「キラが疲れ切るまでやる必要はない」

「あと、機体別の調整だけなの。

 そんなには・・・」

「・・・キラ。

 ああ、もう、そうだった!」

「ア、アスラン!?」



アスランは、さっと腕を伸ばしてキラを引っ張り出す。

キラが呆然としている間に、入れ替わりでシートに座ると、素早く電源を落とした。



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