誰がために−40


キラは女の子です


「言っただろう、キラ。

 キラが責任を感じる必要は無いんだぞ」



民間人であるキラが、協力すると言う。

ラスティ、ニコル、ディアッカの3人は、呆気にとられていた。

アスランの手伝いをこっそりするのとは、違う。

そんなことを、まさか内密に行えるとはキラも思っていないはずだった。

第一、それは専門家がすることである。

この少女に、そんなことができるとのかというのが正直なところだ。

だが、アスランは違う。

アスランは、キラがそれを実行出来るとだろうと思った。

同時に、それはキラの本意でもない、と。

けれど、キラは首を横に振る。



「でも・・・。

 でも、あのままになんて、できないわ」

「キラ。

 軍に協力するということは、戦争に関わるということだ。

 戦争は、嫌いだろう。

 ましてこの戦争は、キラには辛いだけだ。

 キラがそんなことをすることはない」

「あるわ。

 あるわよ、アスラン。

 もう、関わってしまっているわ。

 それに、あんな半端なの、ダメ。

 そのせいで、アスランが大変なのは、イヤ。

 いくらアスランでも、私の作ったプログラムは触りづらいんでしょう?

 あれに関してなら、私の方が早いわ。

 だから・・・」



渋るアスランに、キラが言い募った。

しかしそこに、顔を引き締めたディアッカが割り込む。



「待て。

 誰の作ったプログラムだと?」



キラは咄嗟に、口を噤んでしまった。

残る2人の視線も集まる中、代わりにアスランが答える。



「キラの、だ。

 あのシステムの主要部分に、キラのプログラムが使われていた」

「なん・・・だと!?

 どういうことだ?

 地球軍・・・、いや、モルゲンレーテの人間なのか?」

「ディアッカ、待ってください」



身を乗り出したディアッカを、ニコルと、そしてラスティが引き戻した。

アスランはしかし、構わずに淡々と続ける。



「キラは学生だ。

 プログラムは、使われただけだ。

 キラの知らないところで、な」

「そんなこと、あるんですか?」



懐疑的なニコルの問いには、キラ自身が説明した。



「前にお話したのと重なりますけど。

 私のゼミの先生がモルゲンレーテにラボを持っています。

 それで、私達もそこで研究をしているんですが。

 教授のを手伝うことも、あります。

 その中に、モルゲンレーテの仕事も含まれていたんだと。

 ・・・あれは、確かに私のです」



キラはため息を吐く。

ニコルとラスティは顔を見合わせ、ディアッカは口を歪めた。



「じゃあ、なんだ。

 俺達の苦労は、あんたのせいか」

「違う。

 ディアッカ、口を慎め」

「なんだよ、そういうことだろうが」

「キラの技量が上なのは、キラのせいじゃない」



アスランの言葉に、ディアッカは嫌そうに顔を顰める。

しかし、それ以上口を開くこともなかった。



***



「あの、どうしても、行かなくちゃダメ?」

「さすがに、勝手にはできないからね」

「でも、艦橋に私なんかが行ってもいいの?」



できれば行きたくないと言うキラを、アスランが引っ張って行く。



「隊長が来るように言ったんだ。

 キラが気にするようなことじゃないよ」

「でも・・・」



キラは、妙に積極的なアスランの横顔を見つめる。



やらなくていいって言っていたくらいなのに。

そりゃ、私がやりたいって言ったんだけどっ。

・・・ふぅ。

ニコルさんとかは見るからに優しそうだったけど。

隊長って、偉い人でしょ?

いくらアスランがいい人だって言っても・・・。

会いたくないな。

はぁ。



アスランは、事の次第を艦橋の隊長に報告し、キラについての許可を求めていた。

そして当然ながら、キラに直接会って判断するとの返答。

ただし、艦長が席を外しているので、隊長は艦橋を出られない。

それで特別、キラの艦橋への立ち入りが許された。



*** next

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