誰がために−39


キラは女の子です


「んで、アスランがここに来たってことは・・・。

 あれ、どうにかできたんだよな。

 やっぱり、キラが?」

「ちょっと、ラスティ!」



またしても顔を曇らせるキラを見て、ニコルがラスティを小声で諫める。

しかし何かに気づいた顔をすると眉を寄た。



「キラさんが、何ですって?」

「さっき、キラが代わってたんだよ」

「何をキラに代わるんだ?」

「だから、モビルスーツの・・・」



ごしょごしょと、目の前で行われる中途半端な内緒話に、アスランがため息を吐く。

キラが不安そうに彼らとアスランとを見比べていた。

アスランは強い口調で、ラスティ達の会話を止める。



「まだ、終えてはいない」

「アスランでも、ダメだったんですか・・・」



アスランの言葉に、ニコルは落胆したように肩を落とした。

やはりかなり期待していたらしい。



「じゃあ、僕らもイザークの二の舞が確定ですか。

 僕達の中では、彼がアスランの次に得意ですもんね」



アスランにライバル意識の高いイザークの前では決して言わない科白だったが、皆の共通する認識であった。

ちなみに、彼の前で言わないのは、決して彼に気遣ってではない。

言うと、それはそれは喧しくなるからだった。

それはともかく。

せっかく逸れたニコルの意識を、先の会話にラスティが戻す。



「キラのが、そのアスランより得意なんだろ?

 なんか、キラがやって進展はあったか?」

「って、何の話です?

 ラスティ、さっきから何を言っているんですか?」

「進展は、あった。

 キラが気づいた。

 ニコル。

 キラが手伝ってくれたんだ」

「・・・アスラン。

 それ、まずいんじゃないですか?

 許可、とってないでしょう」



軍事機密の固まりなんですから、と。

咎める口調の中にアスランと、それにキラとを案ずるニコルの気遣いをアスランは感じた。

しかし言葉どおりに聞いたキラは、慌てて口を挟む。



「あ、あの!

 私が、頼んだんです!

 ・・・アスラン、怒られちゃいますか?」

「怒る・・・って。

 いえ、そういうのじゃなくてですね」

「いいんじゃないか、別に。

 それで作業が進むなら、隊長は気にしないぞ、きっと」

「・・・まぁ、おそらく」



彼らの隊長は、軍でも名の知られた名指揮官だ。

実戦を経験しているからか、彼は規則や慣習にはこだわらない。

もちろん、彼が必要と判じたものは別として。



「でも、ほんとうですか?

 キラさんが、アスランよりも?」

「いえ、そんなこと、ないんです。

 アスランが大変そうだったから、手伝えないかなって。

 そう思っただけで」



意外そうなニコルに、キラも違うと首を振った。

アスランはそれには敢えてコメントせず、肝心の話を伝える。



「あの機体に積まれたシステムは、地球軍製じゃないようだ」

「・・・オーブ製ってことか?

 それが、何の関係があるってんだ」

「そうじゃない。

 ・・・いや、それも正確じゃないか。

 モルゲンレーテで作られたことは作られたんだろうからな。

 お前達も気づいているだろう?

 プログラムに統一性が無い。

 結局のところ、それが原因だ」

「それは、確かに、僕も感じました。

 ですが、それがわかっても・・・」

「あの・・・、いいですか?」



躊躇いがちに口を開いたキラが、彼らの会話を遮った。



「いっそのこと、システムを全て書き直すべきだと。

 あのままでは、無駄が多いから」

「それが、キラの結論?」

「ええ、そうよ。

 あんなプログラム、役に立たないわ」

「ですが、いくらなんでも全部書き直すというのは・・・」



それに掛かる手間と時間、そして技術。

なんといっても、ここは軍艦の中。

技術者はいるが、彼らは整備を担当している。

彼らに任せる場合、果たしてどれだけの期間が掛かるのか?

賛成できない、と顔に書いたニコルに、ラスティとそして黙っていたディアッカも顔を顰めている。

そんな彼らに、キラが意を決して言った。



「私が、やります。

 私にさせて、アスラン」



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