誰がために−31


キラは女の子です


「やっぱり、まずくないですか?」



ニコルに伴われて、キラは格納庫へと続く扉の前まで来ていた。

アスラン会いたさに来たものの、どうも居心地が悪い。

というのも、ここに来るまでにすれ違う兵士達が皆、キラをじっと見て行くのだ。



みんな軍服か、揃いの作業服ですもの・・・。



キラが部外者・・・民間人だと、誰もが一目でわかる。



「皆さん、お仕事してるのに。

 邪魔になるんじゃ・・・」

「気にしなくていいですよ」

「でも、なんかやっぱり、不審がられてると思うんですけど」

「平気ですって。

 さぁ、さっさと行きましょう」



別に、不審がって見てるわけじゃないんですけどね。



ニコルには、彼らがキラに目を奪われているのだということがよくわかっていた。

綺麗と思うか可愛いと思うかは人それぞれだろうけれど。

皆、キラの容姿に目を留めているのだ。

次いでその服装がボーイッシュな為に、その性別を悩む。

が、よくよく見れば、その華奢な肢体が少女のものだとわかるだろう。

そこでやっと咎めるようなニコルの視線に気づき、慌てて去って行くのだ。



***



「あれは、昨日の機体?」

「そうですよ。

 アスランが乗ってきた機体です。

 キラさんもあれで来たんですね」

「でも、こんな色じゃ無かったと・・・」

「これは、起動中は装甲が変わるんですよ。

 ほら、あっちの」



言いながらニコルの指さす先にある3機のうち、1機だけ発色している。

その色は、昨日キラも見ていたニコル達の乗った1機のもので、よく見れば他の2機のシルエットにも見覚えがある気がした。



「あの1機は・・・イザークのですね。

 隣りの2機は僕とディアッカのです。

 昨日は3機ともご覧になったでしょう?」

「え、ええ。

 ・・・鮮やかな赤」



綺麗な色。

アスランには、似合うかな。

軍服の赤も、似合っていたし。

・・・格好良かったなぁ。



キラは顔を戻してアスランの機体を見上げ、その色から、今朝見たアスランの姿を思い出す。

想像以上に見目良く成長したアスランに、キラは感慨深げなため息を吐いた。



もう、すっかり素敵になっちゃったよね。

ああ、でも。

もてるんだろうな・・・。



顔を赤らめたり、ため息を吐いたり、暗い顔になったり。

黙ったまま表情をコロコロ変えるキラは、人が見れば変である。

だが幸いにして、キラの腕を引いて前を行くニコルに見られなかった。

2人はモビルスーツの開いたハッチの上に立つ。



「アスラン、どうですか?」

「・・・ニコル?」

「ええ。

 そろそろだと思って、キラさんを連れてきましたよ」

「キラを?」



コックピットを覗き込むニコルと、中にいるらしいアスランの会話を、キラはそわそわと聞いていた。



なんで来たとか言われたら、どうしよう・・・。



少しばかり緊張するキラの前で、ニコルが立ち上がり、アスランが顔を出す。

アスランの巡らした視線がキラに留まり、キラの緊張が増した。

だが。



「キラ」



ふわり、と。

キラと目を合わせた途端に、アスランの顔が笑みを刻む。

それにつられるようにキラの緊張が解けた。

嬉しさが込み上げ、キラも自然な笑顔を浮かべる。



「アスラン」

「友達と、話はできた?」

「うん」

「ああ、でも、ごめん。

 まだ掛かりそうなんだ。

 だから、もう少しニコルと・・・」

「ここにいてはダメ?

 アスランといたいな、私。

 あ、ニコルさんがイヤっていうんじゃ・・・」

「わかっています。

 でも、ここじゃ疲れませんか?」

「平気です。

 ・・・アスラン、ダメ?」



ハッチの上に屈んだキラが上目遣いに首を傾げると、アスランがくすりと笑って承諾した。



「いいよ。

 キラのお好きなように」



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