誰がために−29


キラは女の子です


「あの、すみません・・・。

 ニコルさんも、お忙しいんじゃないですか?」



アスランからニコルにバトンタッチされたキラは、ミリアリア達のいるラウンジへと向かっていた。

横に並んだニコルに、キラがおずおずと話しかける。



「気にしないでください。

 非常時でもなければ、さほど拘束時間は無いんです」



特に、一つの作戦が一段落着いたところですから。

そう心の中で続けながら、ニコルはキラに笑いかけた。



「それに、アスランに任されたんですから。

 隊長の許可も下りていますしね」

「隊長・・・さん?」

「ええ。

 ですから、これも仕事ということです」

「仕事ですか?」

「変ですか?

 キラさんに限らず、民間人の方達を不安にさせないようにと。

 僕らが一人で行けば、監視しているみたいでしょう?

 そんなつもりは無くてもね」



そう、ね。

うん、そうかも。

軍服着た人がいたら、緊張するよね。

・・・知らない人だったら。



「だから、申し訳ないんですけど。

 キラさんを利用させていただくような形にもなります」

「あ、いえ、そんな。

 気を遣ってくださってるんですもの」



***



ラウンジを見渡して、キラは友人の姿を見つけ、駆け寄る。

キラが声を掛ける前に、相手が顔を上げ、声を上げた。



「あ、キラ!」

「おはよう、ミリィ、フレイ」

「夕べ、どうしたの?

 心配したのよ?」

「ごめん、つい・・・」

「話し込んじゃった?」

「じゃなくて。

 寝ちゃったの」

「・・・寝た?

 話ながら?

 眠っちゃったの?」



呆れたと言わんばかりのミリアリアに、キラは恥ずかしそうに頷く。

それに、はぁ、と。

それは大きくため息を吐かれ、キラが身を縮めた。



「キラ、あなたねぇ・・・」

「キラさん」



言いかけたミリアリアを、ニコルの声が遮る。

入り口で少し様子を見ていたニコルが、キラが話している間にキラの横に立っていた。



「あ、ニコルさん」

「紹介してもらえますか?」

「う、うん、ああ、そうね」



ニコルと、ミリアリア、フレイを互いに紹介する。

ニコルは如才無く、ミリアリアはやや気後れしながらもよろしくと言い合った。

しかしフレイは最初にチラッと目をやっただけである。

ミリアリアは眉を顰め、横に座る彼女の脇をつつくが、反応を示さなかった。



「あの、フレイ、どうかした?

 どこか具合悪い?」



心配そうにキラがフレイの顔を覗き込む。

と、ガタンと音を立ててフレイが立ち上がった。

唐突な動きに、キラがビクッとして身をひく。



「ミリィ、私、サイのところへ行くから」

「ちょっ・・・、フレイ!?」



フレイはミリアリアににっこりと笑顔で言うと、キラやニコルには一言も無く、席を立って行ってしまった。

慌ててミリアリアも立ち上がるが、さっさと歩き出したフレイの様子に、諦めたようにもう一度腰を下ろす。



「もう、フレイは勝手なんだから。

 すみません、・・・えっと、ニコルさん」

「仕方ありませんよ。

 こんな事態になって、苛つくのもわかりますから」



申し訳なさそうなミリアリアに、首を振るニコルは、内心でなるほどと唸っていた。

これがアスランの気がかりか、と。

そして、確かに全体にあまり雰囲気が良くないとも。

軍人であるニコルへはともかく、どうもキラへ向けられる視線も悪意というほどでなくとも、好意的では無いと。

この目の前でキラと親しげに話すミリアリアを除いては。



***



「ああ、キラさん。

 そろそろアスランの仕事が終わりますよ。

 迎えに行ってみませんか?」



キラとミリアリアが話し込んでいるのを、少し離れた席で聞いていたニコルは、2人が部屋へ行こうかと言い出したのを、遮るように提案した。



*** next

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