誰がために−28


キラは女の子です


「キラ」

「ん・・・」



ベットで眠るキラの肩を、横に立ったアスランが優しく揺する。

するとキラはその手を除けるようにベットの上を移動した。



「キ・ラ」

「ん・・・ん」



さらに名を呼ばれ、キラは寝返りをうつ。

・・・壁に向かって。



「キラ、起きて」

「ん・・・いや」



アスランはベットに手をつき、キラの耳元で少し大きめの声を出した。

それを邪魔に感じたのか、キラは掛けていたシーツを頭まで引き上げてしまう。

すっかり背を向けて丸まってしまったキラに、アスランが大きくため息を吐いた。



「・・・キラ」

 

キラが端に寄った為に空いたスペースに、アスランはどかっと腰掛ける。

もう一度息を吐くと、背後の白い固まりを振り返った。



「昔なら、力ずくでシーツを剥ぐんだけど。

 さすがに、ね」



幼い頃から寝起きの悪いキラに慣れているアスランは、しかしこのままではいつまでも起きない事も良く知っている。



「少しは良くなってるかと思っていたんだけどね。

 ・・・まぁ、仕方ないか」

「あ・・・・・・・・・ん・・・?」



シーツを纏ったままのキラを、アスランは器用に膝に抱き上げた。

さすがに大きく動かされたせいか、シーツから覗く目がうっすらと開く。

が、すぐに閉じられてしまった。

キラの顔にかかる布をそっと除けると、身じろいでアスランの首もとに顔を埋める。

顔を顰めた様子からすると、ちょうど灯りが目に入り、眩しかったのだろう。

すりすりと身を寄せてくる様子に、思わずアスランの頬が緩んだ。



「・・・と、可愛いけど、起こさないとね。

 キラをこの部屋にひとりにはしておけないから。

 ごめんね」



***



ひゃんっ、と。

おかしな悲鳴を上げて、キラがアスランの膝から転がり落ちる。

危うく床にキスをしてしまいそうになったのは、アスランが救った。

そのままペタンと床に座り、キラはアスランをぽかんと見上げる。



「あれ?」

「おはよう、キラ。

 ・・・起きた?」



ぽうっとアスランの顔を見たままのキラの目前でアスランが手をひらひらと振った。

と、やがてキラはぱちぱちと瞬きをし、おはよう、と返す。



「・・・ここって。

 ・・・・・・・・・ああ、そっか。

 あれ、でも、なんで?」



キラは首を捻り、ひとりで納得して頷いた後、きょろきょろと部屋の中を見回した。

最後にまたアスランに視線を合わす。



「この部屋、私の部屋じゃないよね?」

「俺の私室だよ」

「・・・なんで、私ここにいるの?

 しかも。

 もしかしなくても、私ここで寝たの?」



自分が服のままシーツを纏っていることに気づき、困惑したようにアスランに訊いた。



「憶えてる?

 キラ、話の途中で寝てしまったんだよ」

「話・・・、ああ!

 アスランのお友達・・・じゃないっ。

 同僚の人達とのお話ね。

 そういえば、途中から記憶が無い・・・。

 ああ、でも、そういえば。

 私、泣いたり怒ったりとかしなかった!?

 ヤダ、もう、初対面の人達の前で、私ったらっ」

「キラ、キラ、大丈夫だから」



顔を赤らめたキラに、アスランは安心させるように言う。



「大丈夫。

 キラは間違ったことを言ってなんかいなかったよ。

 そうだ、ニコル、憶えてるよね?」

「ニコルさんって、緑色の髪をした一番年下の人よね」

「ああ。

 どう思った?」

「ニコルさんを?

 うん、そうね・・・。

 一番、穏やかで話がし易そうだったかな」



なんでそんなことを訊くの、と。

目で問うキラに、アスランは今日の予定を述べた。



「午前中、俺は仕事があるんだ。

 それで、キラのことはニコルに頼むから」

「そんな、小さな子供じゃないんだから。

 ひとりで、平気よ」



ミリィ達もいるのだからと続けるキラに、しかしアスランはなんのかのと理由をつけて、ニコルを同席することを認めさせた。



*** next

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