誰がために−27


キラは女の子です


「アスラン、どちらへ行くんです?」



話は済んだと、イザークとディアッカの2人は既に退室している。

それを見送り、キラを抱き上げたアスランについてニコルも部屋を出た。

アスランが、ニコルに頼みたいことがあると言うので。

しかし、アスランが途中で進路を変えてしまった。



「こちらは・・・パイロットの個室でしょう?」



民間人を収容したのは反対側のブロックのはず、と。



「キラを、あの女の傍にはいさせたくないんだ」

「・・・あの女って・・・?」

「救命艇に、キラの友達だという2人が乗っていた。

 そのうちの1人は、コーディネイターをよく思っていない」

「でも、ご友人なのでしょう?」

「・・・キラがそうだと、知らなかったらしい。

 キラを見る態度が変わったんだ」



アスランとニコルは話をしながら、アスランの自室に着いた。

両手の塞がったアスランの代わりにニコルが扉を開く。

この部屋はもともと2人用なので、空いているベットがあった。

アスランはキラをそっと、その上に横たえる。



「他の3人は、問題無いとは思う。

 だが、救助した民間人も全員ナチュラルらしい。

 他にも、同じような人間がいるかもしれないからな」

「それは、ええ。

 ・・・オーブにもいるんですね、そう言う人が」



すぐ傍で話をしていては、キラが目覚めてしまう。

アスランとニコルは、扉を開けたまま通路に出て、話を続けた。



「俺がずっとついていてやれればいいんだがな。

 ニコルも、しばらくこっちにいるんだろう?」



イザーク、ディアッカ、ニコルの3人は、ガモフを母艦としている。

その3人が揃ってヴェサリウスに来たのは、実は彼らの隊長の指示だった。

彼らの奪取してきた機体のデータ採取や整備などを、ヴェサリウスでまとめてやろうという。

その為に、彼ら3人はヴェサリウスへ。

代わりに、ミゲルを始め、ジンに乗るパイロット達がガモフへと移乗した。



「では、彼女を・・・キラさんを彼らに近寄らせないようにと?」

「いや・・・それは難しいだろう。

 キラに友達に近寄るなとは言えないしな。

 ただ、キラを1人で行かせないようにして欲しい」

「そうですね、それなら。

 できるだけ、気を配っておきます」

「すまないな」

「いいえ。

 あなたに頼まれるなんて、そうはありませんからね」

 

***



ミリアリアとトール、サイとフレイはそろそろ話すことも尽きてきて、眠気を噛み殺している。



「キラ帰って来ないね・・・」



ミリアリアが心配そうに呟いた。

その横で、トールが大きく欠伸をする。



「はぁ・・・ふぅ」

「もう、トールったら」

「ん・・・まぁ、キラだって話があるんだろ?」

「そうだね。

 あの幼なじみって人と、久しぶりに会ったんだろう?」



そろそろ寝ようと、サイが言った。

それにミリアリアとトールは顔を見合わせてから、同意を示す。

皆、とにかく異様な事態に心身共、疲れていた。



「じゃあ、トール」

「ああ、行くか。

 んじゃ、ミリィ。

 また明日な」

「うん、おやすみ」

「フレイ、おやすみ」

「ん?

 ああ、うん、おやすみ」



***



「フレイ、寝よ。

 ・・・どうしたの?」



灯りを消そうとしたミリアリアは、フレイが起きあがったままなのを不思議そうに見る。



「寝ましょ。

 フレイだって、疲れているでしょう?」

「だって。

 ミリアリアは平気なの?」

「何をよ?」

「この艦、ザフト軍のなのよ?

 私達以外、みんなコーディネイターなのよ?

 怖いじゃない」

「怖いって・・・ちょっと、フレイ?

 あなた、何を言って・・・」

「コーディネイターって、病気でもないのに、遺伝子をいじってあるのよ。

 そんなの、普通じゃないじゃない」

「フレイ・・・。

 そんな、キラだってコーディネイターよ。

 キラを見てればわかるじゃない。

 コーディネイターもナチュラルも、同じ人間だわ」



ミリアリアが違う意見を述べたのが気に入らないのか、フレイはプイッと背を向けた。



*** next

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