誰がために−25


キラは女の子です


「キラ。

 端から、イザーク・ジュール。

 ディアッカ・エルスマン。

 ニコル・アマルフィ。

 あとラスティを入れて、この4人が俺の同期だ」



結局、通路で話していることもないと、予定通りミーティングルームに戻った面々だった。

それぞれにソファに落ち着くと、アスランが微かに吐息を漏らす。

が、すぐに気を取り直したように、キラと自分の同僚達とを紹介した。



「初めまして。

 キラ・ヤマトです」

「初めまして、キラさん。

 アスランの幼なじみだそうですね?」



やや緊張したように挨拶をするキラに、ニコルが穏やかに笑いかける。

その笑顔と柔らかな口調に、キラの肩から少し力が抜けた。



「ええ、そうです」

「キラとは、月で隣りに住んでいて、学校もずっと一緒だった」

「すると、やっぱりキラさんはコーディネイターなんですね」



月には、コーディネイターだけでなく、ナチュラルも一緒に暮らしている。

けれど、学校は。

やはり吸収力が違うため、一緒に学ぶことは無かっただろう。



「それで、どうしてキラさんは、ここへ?」

「・・・聞いてないのか?」



彼らは、ミゲルから聞いたキラに会う為に来たはずだった。

だから当然知っていると思っていたアスランである。

だが、ニコルは首を横に振った。



「聞いていませんよ。

 僕らが聞いたのは・・・」



ちょっと言葉を切ったニコルは、言いづらそうに続ける。



「アスランが任務中に女の子を攫ってきたって。

 あ、すぐ、彼女があなたの幼なじみだってことも言われましたよ。

 ただ、さすがに信じがたかったですけど」



アスランが彼女とイチャイチャしているとも言われたので。

まさか、あのアスランが?

というのが、ニコルの正直な感想だった。

・・・イザークとディアッカも同様であろうが。

けれど今では、ミゲルは決して大げさには言っていなかったとも思う。

こうして話している間、目の前の2人は、手を握り合っていた。



幼なじみじゃなくて、恋人ですね、これ・・・。



ここに移動してくるまで、アスランがキラの手を引いて来ている。

そのまま並んで座り、さすがにキラは手を離そうとしていた。

だが、アスランが強く握って解けない。

なぜと見上げたキラは、アスランの微笑みに頬を染め、そのまま大人しくアスランに手を預けていた。

その一部始終を、ニコルは目の前で見せられている。



てっきり、ミゲルが大げさに吹聴したんだと思っていたんですけど・・・。



疲れたように肩を落とすニコルだった。



「聞いていない?」

「ええ、説明が全然ついていなかったんです。

 だから、彼女がどうしてここにいるのか知らないんですよ」



***



「って、アスラン」



話を聞いたニコルは、聞く前よりも疲れている。



「あなた、それ、ほんとに立派な人攫いですよ」

「いや、優等生さんの意外な一面を知ったな」



はっはっはっ、と。

ディアッカは笑ってみせるが、少しばかり顔が引きつっていた。



「・・・こんな一面、知りたくなかったです、僕は」



憧れていたのに。

付け加えられたその一言に、反応したのはキラである。



「やっぱり、アスランってプラントでも優秀なんですね!

 月でも、アスランってば、ほんとに優秀で。

 誰も敵わなかったんですよv」



嬉しそうに話すキラは、どう見ても無理矢理連れてこられた人間には見えなかった。

いくら親しくても、と訊ねたニコルに、キラはあっさりと答える。



「イヤだったのは、軍艦だからです。

 アスランと一緒にいられるのはとっても嬉しいですから。

 来てしまったものは仕方ないです。

 ・・・アスランが軍に志願した理由も聞きましたし」

「・・・そうですか。

 軍は、嫌いなんですね?」

「ニコルさんは好きなんですか?

 戦争を?」

「まさか」

「ディアッカさんとイザークさんは?」

「好きか嫌いかって訊かれてもなぁ」

「好き嫌いで戦争なんか、するかっ」



口を濁すディアッカの言葉を、イザークが強い口調が遮った。



*** next

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