誰がために−24


キラは女の子です


「今、そちらに向かうところだった。

 なんで、3人揃って来た?」



チラと見たキラは、いつの間にか顔から手を外している。

さらにその視線は、近づいてくる人影へと向き目を瞬いていた。

そのキラの前に、さり気なく移動したアスランは、彼らが近づきすぎないように目で牽制する。



「アスランが遅いからですよ。

 ・・・約一名、待ちきれなくて」



1人で行かせるよりいいと思いましたと言われれば、アスランも頷くしかなかった。



・・・イザーク、か。

ニコルには止められない。

ディアッカは、・・・面白そうに同行したんだろうな。



アスランにも、その時の状況が思い浮かべられる。

仕方なく、大げさにため息をついてみた。

それでなにが好転するわけでもないけれど。

と、上衣の裾がツンツンと引かれて振り返れば、床にペタンと座り込んだキラが、アスランの陰から頭を出している。

その表情には、好奇心が浮かんでいた。

紹介しろ、ということらしい。

アスランとのやりとりで、心配する必要のない人間なのだと判断したのだろう。

彼らが、アスランが会わせると言った、アスランの同僚達なのだとも。

だが、アスランが口を開く前に、別の声が先んじた。



「それが、あんたの女?」

「ディアッカ」

「なんだよ、イザーク。

 イザークだって聞きたいだろ?」

「やめろ。

 びっくりしているぞ」



その言葉に、アスランを含めた全員がキラに目を向ける。

キラは目を見開いて、アスランの陰に隠れてしまっていた。

アスランは手を伸ばし、キラを立たせてやる。



「キラ。

 大丈夫か?

 キラがイヤなら、こいつらと話をする必要は無いからな」

「あ、と、でも」



探るようなディアッカと、機嫌の悪そうなイザークの視線にキラは戸惑っていた。

アスランの仲間だという彼らに、キラは興味がある。

しかし彼らも、キラへはいろいろと思うところがあるらしい。

それでも。



ミゲルさんもラスティさんも、悪い人じゃなかったし。



キラはアスランの腕の中でアスランと目を合わせる。

そして言葉を紡いだキラは、次の瞬間、アスランが体を強ばらせたのを感じた。



「アスランの、お友達でしょ?

 紹介して、アスラン」

「・・・友達?」

「・・・違うの?」



アスランの腕が緩んだので、そっとその背後を窺い見る。



「私、変なこと、言った?」



イザークはアスラン同様硬直して見えた。

ディアッカは、眉を寄せている。

すぐ傍に立っていたニコルも、なにやら変な顔をしていた。



「あの・・・。

 ねぇ、アスラン?」

「あ、ああ。

 ああ、いや、別になんでもないよ」

「だけど」

「いや、ちょっと、そうだな。

 彼らは、同僚で、仲間なことは間違いないんだが。

 友達、とは言わないかな、と」

「そ、そうだな」



キラが目を向けると、ディアッカもこくこくとアスランの言葉を肯定する。

イザークは固まったままだ。

だがニコルは、ムッと顔を顰める。



「アスラン、僕もですか?」

「ニコル?」

「それは、僕は年下ですし。

 頼りにはならないとお思いでしょうけど。

 そうはっきりおっしゃられると、傷付きます」



きっぱりと言うニコルに、キラは首を傾げた。

どうやら、アスランとニコルの意識にズレがあるらしい、と。

不思議そうに見上げてくるキラに、アスランが言い訳する。



「同僚と、友達は違うだろう?」

「・・・違うの?」

「キラのお父さんだって、勤務先の人を友達なんて、言わなかっただろう?」

「・・・うん。

 でも、お友達もいたわよ?」

「・・・ああ、そうだね。

 ニコルを、頼りないとは思わないよ」

「では、お友達、として紹介してくれるんですね?」



真顔でニコルの先の言葉を否定したアスランへとニコルが疑わしそうにそう訊くのへ、アスランも苦笑を返した。



「・・・ああ」



*** next

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