誰がために−22


キラは女の子です


「ふぅん・・・。

 そう、キラってコーディネイターだったんだ」

「フレイ?」



どこか刺があるような言い方のフレイに、サイが眉を寄せた。

小さく呟かれた声は、隣りにいた彼にしか聞こえていない。

しかしその表情に嫌なものを感じたアスランは、そっと他の3人はどうかと窺い見た。



この女は、キラの友人とは思えない。

コーディネイターへの偏見も持っている。



話から、フレイ以外の3人は皆、キラがコーディネイターと知っていたのがわかる。



他の3人はだが、問題なさそうだな。



そう判断したアスランは、出来る限り、キラをフレイに近づけさせないようにしようと決めた。

とはいうものの、アスランもずっとキラに付き添っていることはできない。

そうなれば、キラがこの友人達と過ごすのは必然だった。



「キラ、俺の同僚達に紹介したいんだが。

 今、いいか?」

「アスランの?

 ミゲルさんとラスティさん以外のひと?」

「ああ。

 さっき見たあれに乗っていた3人だ。

 ・・・ミゲルは、同僚というより先輩だが」



実のところ、アスランは彼らにキラを会わせたくない。

第一、彼らとはアスランは決して親しいとは言えなかった。

そんな彼らに、会わせる義理もない。



まぁ、ニコルくらいならいいけどな。

だが、キラをこの女に近づけておくよりはま、マシだろう。



「あ、でも、ミリィたち・・・」

「気にしないで、キラ」

「うん、行ってきなよ」



再会できた友達と離れることに、ちょっと躊躇いを見せたキラの背を、ミリアリアが押した。

ミリアリアはキラの耳元で囁く。



「行ってきなさいよ、キラ。

 私達は、いいからさ。

 せっかく、アスランさんと会えたんでしょ?

 キラが大好きな、ね」

「ミ、ミ、ミリィ!?」



瞬時に顔に血を上らせたキラが、わたわたとアスランを横目に見た。



き、聞こえてないよね!?



「ふふんv

 否定しても無駄だからね?」

「ミ・・・」

「キラから聞いた時から、そう思ってたんだv」

「そんなこと、今まで一言も・・・っ」

「うん、言わなかったからね。

 だって、気づいてなかったでしょ?」



こそこそと話ながら、ミリアリアがキラを部屋から押し出す。

力では、キラの方が上なはずなのだが、動揺したキラは、ミリアリアに押されるままだ。

キラが通路に出たところで、ミリアリアがおもむろに振り返る。



「アスランさん。

 さ、キラを連れて行ってくださいな」



***



「彼女とは、とても親しくしているみたいだね」

「そうなの」



キラの背に手を回して歩きながら、アスランはふと、背後を見た。

そこには、ミリアリアがいるわけではないけれど。

キラとのやりとりから、キラが彼女に気を許しているのがアスランにもわかった。



「ミリィは、優しいの。

 アスランも、きっと好きになるわ」

「・・・そうだね」

「ヘリオポリスで最初にできたお友達なの。

 ミリィもね、親友って言ってくれるから。

 ふふっ」



楽しそうに微笑むキラに、アスランは内心、おもしろくない。

しかしそれを表面に出すようなことはしなかった。

代わりに、わざと拗ねたように言ってみる。



「俺は?」

「・・・え?」

「俺はキラの親友だって、キラが言ったんだろう?

 ずっと、ってね」

「あ・・・う、んと、そうね。

 言った・・・わよね?

 うん、言った」

「今は違う?

 俺より、彼女がいい?」

「え・・・、えっと」

「はぁ、いいよ、無理しなくて。

 そうだよね、3年も音信不通だったんだから、仕方ないか」



大きくため息を吐いて見せたアスランに、キラはブンブンと音がするほど首を横に振った。

懸命に、否定している。



「ア、アスランは、別。

 全然、別なのっ。

 昔も今も、一番なのはアスランだから!」



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