誰がために−21


キラは女の子です


「なによ、これ。

 ようするに、ザフトが悪いんじゃないの」



救命艇で来た人々とともにいろいろと説明を受けた。

皆、幾つかのグループに分かれ、部屋へと案内されている。

ミリアリアとフレイに関しては、キラ達と近い部屋を宛われた。

目の前に兵士がいる間は大人しくしていたフレイも、その姿が消えると不満を口にし始める。



「・・・フレイ。

 地球軍だって、もっと言えばオーブだって悪いよ」

「何よ、サイ。

 サイはあいつらの肩を持つの?」

「そんなわけじゃ・・・」

「フレイ、落ち着きなさいよ。

 サイ達も、大変だったみたいなんだから」

「私を放っておくのがいけないのよ」



は・・・話が通じない・・・はぁ。



頑ななフレイに、ミリアリアが肩を落とした。

トールは最初からそっぽを向いている。

キラは口を出さず、気遣わしげに友人達を見ていた。



「それで。

 ヘリオポリスが、って本当なの?」

「うん、ミリィ。

 信じたくないけど」

「あの空間には、もう残骸しか残ってなかったわ」

「見たの?」

「うん。

 ・・・展望室から」

「トールも?」



暗い顔をするキラに、ミリアリアも信じざるを得ない。

けれど、ついトールにも確認してしまう。



「俺は、見ていないんだ。

 でも、街が壊されていくのは見たよ」



ブルッと体を震わせるトールを見て、ミリアリアは俯いた。



「そうなんだ。

 お父さんとお母さんは無事かな?」

「うん、無事だといいよな」



家族の心配をし合う2人に、キラも両親を思い返す。



父さん、母さん。

無事でいてね。

アスランに会えたの。

2人も会いたいでしょう?



そこまで考えて、アスランから聞いた彼の母親のことを思いだした。



母さん、レノアおばさまが亡くなったんですって。

一緒に、お墓参りに行きましょう。

だから、生きていてね、2人とも。



***



「失礼。

 ここにキラはいるか?」

「アスラン!」



シュンと音を立てて開いた扉から、アスランが顔を出す。

それを見て、パッとキラの表情が変わった。

身軽く立ち上がり、アスランに抱きつく。



「キ、キラ!?」

「アスラン・・・」



しがみついてくるキラの勢いに、アスランは驚きの表情を浮かべた。

だが、キラの声が潤んでいるのに気づく。



「どうした、キラ?

 何かあったのか?」



アスランの胸で、キラは首を振った。



「なんでも、ないの」

「だって、キラ・・・」

「ちょ、ちょっと、母さん達のことが心配になっただけ」

「・・・ああ」

「それと、おばさまのこと、思い出して」

「そうか・・・」



アスランがキラの頭をゆっくりと撫でる。

すっかり自分達だけで離していたミリアリアとトールは、心配げにキラを見た。

もちろん、サイも。



「な・・・によ、その人」



しかし、アスランのことを聞いていないフレイは、顔を強ばらせている。

サイが慌てて説明した。

けれど。



「キラの幼なじみが、ザフト兵?

 だって、ザフトってみんなコーディネイターでしょ?」

「キラもコーディネイターだよ。

 フレイは知らなかったっけ?」



サイに教えられ、フレイがキラを見る。

珍しいものを見るかのような目で。



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