誰がために−20


キラは女の子です


「キラの、幼なじみ?

 この人が?」

「ええ、そうなの」



キラは嬉しそうに頷く。

ミリアリアは、紹介されたアスランを、じっと見つめた。



・・・うん、翡翠の色の瞳の綺麗な男の子。

キラから聞いたとおりだわ。

可愛い感じはもう無いみたいだけど。

でも・・・。



「どうして、キラの幼なじみの彼が?

 確か、連絡がとれないって言ってたよね。

 それに」

「あ、それは・・・」



ミリアリアの視線は、アスランの軍服に向いている。

それを見て、キラの顔が曇った。

ミリアリアにはアスランが着ているのが、ザフトの軍服とはわからないのだろう。

それでも、それが私服には見えないはずだ。



「キラ」

「アスラン」



キラの躊躇いを見て取り、アスランが声を掛ける。

ほっとしたように見上げてくるキラの頭を、くしゃっと撫でた。



「話は、後でゆっくりするといいよ。

 君もとりあえず、他の人達と移動してくれるかな」



後半は、ミリアリアへ顔を向けている。

言われて見回せば、ミリアリアとフレイ以外は、既に移動を開始していた。



「係官から、皆さんに現状の説明がされると思います」



それで、キラが言いにくいことを口にしなくて済む。



「彼女と一緒に行っておいで。

 キラもそこで、IDのチェックをしてきた方がいい。

 ミゲル、頼んでいいか?」

「ああ」



キラに、ミリアリアと同行するように薦め、アスランは別に行動すると示した。

頼まれたミゲルは、チラッと視線を上にやり、肩を竦める。



「アスラン?

 私と・・・私達と一緒じゃないの?」

「ごめん、キラ。

 先に行っていてくれ。

 俺もすぐ行くから」



安心させるようにキラに微笑むと、アスランは床を蹴って飛び上がった。

その背を見上げるキラの肩を、ミゲルが叩く。



「大丈夫。

 本当に、すぐ来るよ。

 ラスティ、行くぞ!」

「おう!

 サイ、移動するぞ」

「は、はい。

 さぁ、フレイ、とにかく行こう」



フレイはサイの服にしがみついて、切々と辛かったと訴えていた。

サイはそんなフレイに困惑しながらも、落ち着かせようとしたのだが、なかなかそうはいかず・・・。

ラスティの呼びかけに、これ幸いとフレイの気を逸らそうとした。

しかし。



「やだ、今度はどうなるの!?

 もうイヤよ!

 早く、家に帰らせてよ!」

「だから、フレイ。

 ここは、宇宙なんだって。

 とにかく、説明を聞こう、ね?

 今度は俺と一緒だから」



サイの説得も虚しく、フレイは不機嫌さを隠そうともしない。

それでも口を閉じたので、サイは彼女の手を掴み、他の人達の後を追った。



「・・・ほんと、勝手ね」



そんなフレイの様子を見て、ミリアリアは呆れたように呟く。

ミゲルは眉を寄せていた。



「なんだ、あの女。

 お前達の、友達なのか、あれ?」

「・・・まぁ、そうです。

 正確には、サイの彼女だけど。

 俺らは、それで知り合って・・・」



口を濁すトールも、フレイの言い様に腹立たしく思っている。



なんだよ、あれ!

少しはサイの心配もしろよな!

キラのことだって!



「フレイも、怖かったのよ。

 いいじゃない、みんな無事だったんだから」



いや、それはそうなんだけどな。

そう、それは良かったと思うわよ。



とりなすように言うキラに、ミリアリアとトールがため息を吐いた。



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