誰がために−19


キラは女の子です


「ミリィもフレイも、同じカレッジの学生なの。

 ミリィは私達とゼミも一緒。

 フレイは違うけど。

 ひとつ下だし」



ガラスに額を寄せたまま説明したキラは、そこでアスランを振り仰ぐ。

アスランは既にキラの横で、同じように見下ろしていた。

ミリィと、フレイを指さす。



「2人のところに、行かせて。

 ダメ?」

「・・・今はやめた方が無難だ。

 ちょっと混乱しているしな」



アスランの言うとおり、救命艇から出てきた人々は、かなり動揺していた。

それでなくても、普段重力下にいる彼らが、唐突に無重力の場に出てまともに動けるはずもなく・・・。

さらには、彼らのまわりにいるのが、どう見ても軍の人間なのだから。

しかも彼らは、ここまでの経緯を知らないだろう。

だからこそ。

キラは友人が不安そうにしているのが心配だった。



「あの、どうしても、ダメ?」

「知り合いなら、行かせた方がいいな」



考え込んだアスランに、ミゲルが代わりに口を開く。



「ミゲル」

「お前の心配もわからないでは無いけどな。

 とりあえず、あの民間人達を安心させる方が先だ。

 それには、ここにいる3人は適任だろう」

「・・・わかった」



仕方なさそうに息を吐くアスランに、キラが笑った。



「大丈夫よ。

 別に、危険は無いでしょう?」

「・・・そうだな」



***



「ミリィ!おーい!」

「フレイ!」



サイとトールは、ミゲルとラスティに付き添われ、格納庫に群れる民間人たちへと急ぐ。

キラは、アスランに安全のためにと、2人でゆっくりと移動させられていた。

間近に迫り、サイとトールは手を振る。

その彼らに、ミリアリアとフレイが気づき、目を見開いた。



「サイ!」

「トール・・・!?」



フレイは降りていた床を蹴り、サイに飛びつく。

ミリアリアは呆然としており、トールがラスティに助けられてその横に降り立った。



「ミリアリア、無事でよかった!」

「トール・・・、なんで?

 トールのも、ここに?」

「いや、違うんだ。

 あ、でも、キラとサイもここにいるよ」

「キラも!?

 よかった、みんな無事なのね?」



トールの示す先では、サイがフレイに抱きつかれている。

フレイの喚く声がここまで聞こえた。



「サイ、なんなのこれ!?

 なんで、私達がこんなところに?

 サイもなんでここにいるの?

 この人達、何?

 ここは何処なのよ!?」

「フ、フレイ。

 落ち着いて、ね?」

「心細かったんだから!

 サイが一緒にいてくれないんだもの!」

「ミリィがいただろう?

 それに、2人しか入れなかったんだから。

 仕方ないだろう?」



宥めるサイに、フレイはフンと横を向く。

サイは困ったように頭を掻いた。

その横を、アスランに肩を抱かれたキラが通り過ぎる。



「ミリィ!」

「キラ!」



アスランのお陰で、キラはミリアリアの目の前に立てた。

キラとミリアリアは名前を呼び合うと、抱き合って無事を喜ぶ。

勢いがついて浮きそうになるのを、アスランが防いだ。

しばし少女達の声が響き、ふと、それが止まる。

ミリアリアが、キラに触れるアスランに気づいたのだ。

不思議そうにキラとアスランを見比べる。



「誰?」



軍服らしい姿で、キラと妙に親しげなことを疑問に思ったのだろう。

キラもアスランをちょっと見て、彼がなぜ不機嫌そうなことを見て取った。

理由はわからなかったが、とにかく急いで2人を紹介する。



「アスラン。

 ミリィ・・・ミリアリアは、ヘリオポリスでの一番のお友達なの。

 アスランがいなくて寂しかった私に、親切にしてくれたのよ

 ミリィ、彼はアスラン。

 ほら、前に話したでしょう、憶えてる?

 幼なじみの、アスラン」



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