誰がために−17


キラは女の子です


「キラ、話は済んだのか?」



アスランが部屋に入ってくる。

そこでは、キラ、サイ、トールの3人が一様に暗い顔で黙り込んでいた。

アスランの声に、キラが顔を上げる。



「・・・アスラン。

 ええ、話は・・・」

「そうか。

 ちょっと、いいか?」

「私?」

「ああ、いや・・・そうだな。

 他の2人も一緒に来てくれ」



***



「あれ、アスラン。

 そいつらも連れてくのか?」



アスランに連れられて移動中、ミゲルとラスティが合流した。

彼らも同じところに行くらしい。



「ああ。

 隊長の指示があった」

「隊長が?

 ふぅん、なるほどね」



ミゲルにじろじろと見られ、キラはアスランの陰に隠れた。

サイとトールは僅かに顔を顰める。



「ちょうどいい。

 自己紹介しようか。

 これからしばらく、同じ艦にいるんだからな。

 俺は、ミゲル・アイマン。

 ミゲルって呼んでくれてかまわない」

「ラスティだ。

 ラスティ・マッケンジー」

「アスラン・ザラ。

 全員、モビルスーツパイロットだ」



一方的に名乗られ、サイとトールも名前と、学生であることを述べた。

次はキラの番、と。

その場の視線がすべてキラに集まる。



「キラ、です。

 キラ・ヤマト」

「ふぅん。

 キラは、アスランの幼なじみだって?」

「・・・ええ」

「ラスティ」



アスランの腕に絡められたキラの腕に力が込められたのを感じ、アスランがやや強い語調でラスティを呼んだ。

だが、ラスティはチラッとアスランを横目に見ただけで、すぐにキラに話しかける。



「君、コーディネイターだろ?」

「そうです・・・けど」

「運動とか、得意なんだ?」

「ラスティ!」

「なんだよ、アスラン。

 話ぐらい、いいだろ。

 こんな可愛い子、独り占めすんなよ。

 なぁ、ミゲルもそう思うだろう?

 ・・・って、先に行くなよっ」



床に降り立ちキラに迫っていたラスティと、キラの前に立ってラスティを睨むアスラン。

ミゲルは付き合っていられないとばかりに、残る2人と、さっさと先へと進んでいた。

それに気づいて、ラスティも慌てて床を蹴る。

唐突な動きに、キラは唖然とその背中を見送った。



「えぇと・・・」



戸惑ってアスランを見上げると、アスランと目を見合わせて、どちらともなく微笑む。



「俺達も、行くよ」

「うん」



揃って床を蹴り、キラはアスランに導かれるのに任せた。

そしてアスランが前方を見るその横顔を、じっと見つめる。



変わってないな。

綺麗、で。

・・・ずっと格好良くなってるけど。



「なんだい?」

「あ、ううん」



視線に気づいたアスランが振り向くと、キラは首を振った。

が、すぐに思い直して気になっていたことを訊いてみる。



「私達、どこへ行くの?」

「格納庫だよ」

「なんで、そんなところに私が?」

「同僚が、拾い物をして来たんだよ」

「拾う?」



話が飲み込めず、キラは眉を寄せた。



「そう。

 キラ達と関係無くもないからね」



そうして明かされたその拾い物とは。

ヘリオポリスからの救命艇だった。



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