誰がために−16


キラは女の子です


「モルゲンレーテが?」

「ほんとかよ!?」



結局、アスランはキラをサイとトールとともに一室に残してくれた。

アスラン自身は仕事があるからと。

もちろん、ラスティも。

キラはヘリオポリスの友人達に、アスランから聞いた話を伝えた。



「私達が巻き込まれちゃったのは、偶然なんだけど。

 モルゲンレーテには、攻撃される理由があったということよね」

「だって・・・、オーブは中立なのに・・・」

「だけど、俺達はアレを見た。

 トール、キラの言うとおりだよ。

 少なくとも、あの戦艦がオーブ軍のはずはない」



サイの目には、あの艦は街が破壊されていくことに躊躇いを感じていたようには思えない。

じっくり見ていたわけではないけれど。

ザフトのモビルスーツの方が、余程攻撃を手控えていたのではないだろうか。



「それに、俺達の乗せられたモビルスーツ。

 ザフト軍のがあんなとこにあるわけないし」

「だけど。

 それこそ、地球軍にはモビルスーツなんか」

「まぁ、ナチュラルには操縦は無理だって聞くけど」

「でも・・・システムで、かなり変わるんじゃないかしら。

 ナチュラルにも使えるようなのを開発したとか?」



キラの科白に、サイとトールは何とも言えない顔を見合わせた。

頷き合う。



「あぁ、それは無いな」

「うん、無いよ」



妙に確信を持った否定に、キラが首を傾げた。



「なんで、無いの?」

「だって、なぁ?」

「ああ、ちょっとあれは、うん」

「なんなの?」



2人は、キラに、自分達がヘリオポリスから出るまでのことを口々に言う。

曰く、システムが稚拙に過ぎたと。



「俺は、外から来たザフトの機体に乗せられたからさ。

 直接見ていたわけじゃないんだけど」

「このままじゃ、まともに動かないって言っていた。

 んで、目の前でキーボードを打ち始めて・・・どのくらい掛かったかな?

 トールの方の・・・ミゲルって人が苛ついていたから、まぁそれなりに」

「キラの・・・あの人も時間が掛かってたぞ」

「アスランも!?

 そんな・・・じゃあ本当なんだ」



キラはアスランの実力を知っている。

プラントで教育を受けた以上、以前よりも格段に向上しているだろうことも。

そのアスランが手間を掛けたというのでは、元々のシステムのレベルも知れていた。



「それじゃあ、モビルスーツなんか作っても・・・」

「意味無いよなぁ?」

「地球軍にコーディネイターなんかいないだろうしなぁ」



3人揃って首を捻り、だが、キラがハッと我に返る。



「って、私達が地球軍の心配しても仕方ないわよ」

「・・・ああ、まぁ」

「・・・そりゃ、そうだよな」



キラに指摘されて、自分達がそれこそ自分達に関係無い話をしていることに気づく。



「・・・何の話してたんだっけ?」

「えと、だから。

 その・・・。

 アスランを嫌わないで欲しいの!

 ほんとうは、とっても優しい人なの。

 軍に入ったのも、別に戦争したいからじゃなくて。

 できることをしよう、って。

 ほんとなの。

 とっても優秀で。

 昔から、なんでも出来る人だったわ。

 でも、優しいの。

 だから・・・っ」



キラが身を乗り出すようにして訴えた。

そのままさらに続けようとするキラを、しかしサイの声が遮る。



「わかったよ。

 まぁ、ちょっとあの態度は気に入らないけど」

「うん、キラがそう言うなら。

 それより・・・」



サイとトールから、刺々しさが消え、キラ胸を撫で下ろした。

だが、彼らには家族や友人知人の消息への不安が残っている。



「父さんたち、無事かな?」

「ミリィたちもな」

「そうね・・・。

 私達が知らなかっただけで、街ではちゃんと警報が鳴っていたそうだから。

 たぶん・・・」



それぞれに、大切な人達を思い浮かべた。

彼らに出来るのは、その人達の無事を祈ることだけ。

それに。



「みんなも、私達のことを心配してるよね・・・」



特にミリアリアなどは、キラ達がちゃんと避難できたかを。

しかし、オーブと連絡がつけられるまでには、まだ時間が必要だった。



*** next

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