誰がために−15


キラは女の子です


「サイ、トール・・・」

「「キラ」」



キラが案内されたラウンジには、キラの友人2人がラスティとともに待っていた。

キラは、思わず足を踏み入れたところで立ち止まる。

2人の様子から、彼らもヘリオポリスに起きたそれを聞かされたのだとわかった。



「キラ、聞いたか?」

「何かの間違いだよな!?」

「なぁ、キラ?」



どちらともなく駆け寄ったサイとトールがキラに詰め寄る。

キラは唇を引き結んで、顔を伏せた。

その事実を口にしたくなくて。

けれどそれは肯定に他ならなかった。



「で、でも、やっぱり間違いってことも・・・っ」

「本当のことだ」



それでもと、否定して欲しくてトールがさらに言いかけるのを、アスランの言葉が止める。

アスランはキラを庇うように僅かに前に出ていた。



「君達が信じたくないのは当然のことだ。

 だが、これは違えようのない事実」

「・・・っ、アスラン!」



冷たい声を出すアスランに、キラが小さく咎めるように呼ぶ。

アスランの腕にキラが両腕を絡めて引いた。

しかしアスランはびくともせず、キラに背を見せ続ける。



「お前!

 なんでそんな他人事みたいに言うんだよ!?

 お前らが、やったんだろ!」

「・・・そうだ!

 ヘリオポリスは、中立だ!

 俺達だって、そうだ。

 そんなに戦争したければ、他でしてくれよ!」



まるで捌け口を見つけたかのように、2人はアスランに喚いた。

それを、アスランは無表情なまま無視するようにラスティに顔を向ける。



「ラスティ。

 彼らを部屋へ」

「了解」

「な・・・っ、ちょっと待てよ!」

「話は終わってない!」

「あぁ、はい、はい。

 君らも落ち着いて。

 怒ったところで、無かったことにはならないからさ。

 それに・・・」



サイとトールの腕を掴んだラスティは、腕をもぎ放そうとする彼らを冷静に諭した。



「崩壊の原因は俺達じゃないしな」

「そんな見え透いた嘘を・・・っ」

「関係無いとは言わないけど」

「・・・っ!」

「バカにしているのかよ!?」

「違うって。

 見ただろう、あの艦を」



ラスティに言われ、サイもトールも、モビルスーツの中から見た戦闘を思い出す。

そう、確かに。

ザフト軍のらしきモビルスーツ群が、真っ白な戦艦と砲撃を交わしていた。

気を失っていたキラは見ていないけれど。



「俺達は、街に被害を加えるつもりなんか無かったさ。

 けどなぁ・・・。

 地球軍が」

「ラスティ。

 俺達に責任が無いとは言えない」

「そ、そうだよっ。

 相手も悪いかもしれないけどな。

 お前らがやって来なければ・・・っ」



あくまでも地球軍が悪いと言い切るラスティに対し。

双方に責があると言ったアスラン。

一度は引きかけたトールは、アスランに掴みかかる。

もちろんそんなことを許すアスランではなく、その手はアスランに触れる前に逆に掴まれた。



「だからといって、だ。

 君にどうこう言われる筋合いでもない。

 オーブに連絡をとれるまで、大人しく待っていてもらいたい」

「なん・・・っ!?」

「待って、トール!

 サイも。

 アスランも、よ。

 なんで、そんな言い方するの?

 ちゃんと、説明してあげて。

 私の友達は、話の通じない相手じゃない。

 私はアスランをよく知っているけど。

 2人は知らないの」



キラは必死に言い募る。

冷たい態度のアスランを見ていられなかった。

自分の友人であるサイとトールに、軍人として接しているのはわかっている。

それでも、言わずにはいられないのだ。



アスランを悪く思われたくない。



「お願い、アスラン」



トールの手首を握るアスランの手に、キラは自らの手を重ねる。

ため息と共に、アスランの手から力が抜けた。



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