誰がために−12


キラは女の子です


「「キラ!」」

「サイ、トール・・・」



アスランに連れられて格納庫から出たキラは、そこで友人達と顔を合わせた。

彼らの傍らには兵士・・・ラスティとミゲルが立っている。

ミゲルがしげしげと向けてくる視線を感じる余裕もなく、キラはアスランの手を離してサイとトールに飛びついた。



「2人とも怪我、無い?」

「キラこそ、なんともないか?」

「私?

 私は、どこも」

「そっか、それならいいんだ」

「キラ、そいつ・・・その人、キラの幼なじみって」



キラがサイと話す間、キラとその横に立つアスランとをチラチラと窺い見ていたトールがおずおずと訊く。

トールはどことなく腰が引けていた。



「あ、うん。

 アスランは・・・」

「キラ」



アスランがキラを遮るように呼びかけながら、その肩を抱き寄せる。

キラの顔を覗き込むようにして、アスランはゆったりと微笑んだ。



「紹介は、後でゆっくりとしてもらうよ。

 場所を変えよう。

 キラも、彼らも休んだ方がいい」

「そう?

 そう、かな」

「その間に、ヘリオポリスの様子も聞いてくるから」



***



「サイと、トールね。

 俺はラスティだ。

 2人一緒にこの部屋にいてくれ。

 悪いけど、扉はロックさせてもらうよ」



そう言ったラスティが出ていくと、残った2人は揃ってため息を吐く。



「はぁ・・・俺達、いつ帰れるのかな?」

「・・・うん」

「それに、父さん達は大丈夫だったかな?」

「・・・うん」

「フレイ達は避難所に入れたから、何かあっても心配ないだろうけど」

「・・・うん」

「街もかなり・・・」

「・・・うん」

「って、トール?

 さっきから、どうしたんだ?」



トールの常ならぬ様子に、サイが不審そうに訊ねた。



確かにこの状況には俺もいろいろ不安とか感じるけど。

いつものトールなら、結構好奇心が疼いて、そわそわとしそうなものだけどなぁ。



「ちょっと、うん、なんていうか・・・。

 ここザフトの艦だろ?

 ナチュラルを嫌っている人が多いんだろうなって。

 そう思ったらさ」

「・・・まぁ、それはな。

 言っても始まらないだろ」

「だけど、あのアスランって奴。

 俺達のこと睨んでなかったか?」

「ああ、それは俺も感じたけど」



サイはアスランとの顔合わせを思い出しながら、しかし苦笑を浮かべる。



「あれは、そういうのじゃないだろ」

「って・・・?」

「嫉妬」

「・・・嫉妬?」

「そんな感じだったよ。

 たぶん、俺達がキラといるのが気に入らなかったんだよ」

「じゃあ、俺達がナチュラルだからってんじゃあ・・・」



サイに言われて、トールも思い返せば、確かにアスランが睨んでいたのは、キラが自分達と話をしていた時だった。



「そっか、なんだ・・・」



トールが気抜けしたように呟いた。



***



「あ、アスラン!」



一人、部屋に残されたキラは何をすることもなく、入室してきたアスランに嬉しげに近寄る。



「キラ・・・」

「アスラン、どうしたの?

 ・・・悪い報せ、なの?」



紅い軍服をきっちりと着込んだアスランの、そのやや血の気の引いた顔色に、キラの顔も曇った。



「落ち着いて聞いて欲しい」

「なに?」

「ヘリオポリスが・・・」



言いかけて言葉を切るアスランに、キラはイヤな胸騒ぎを感じながら、しかし黙って続きを待つ。



「崩壊した」



その一言を、キラはすぐに理解することは出来なかった。



*** next

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