誰がために−11


キラは女の子です


「ん・・・ふぅ」

「キラ、ちょっと動かないでくれよ」



体勢の苦しさに身じろいだキラは、間近に聞こえた声に、驚いた。



「な、何、何これ!?」

「危ないって、キラ!」

「イヤ、なんなの!?」



起きあがろうとして、キラは体が思うように動かせずにさらに焦る。

ジタバタと藻掻くキラを、アスランが抱え込んだ。



「キラ!」



強く呼べは、キラはフッと動きを止める。

頭をゆっくりと巡らせ、触れんばかりの距離にあるアスランと目を合わせた。



「アスラン?」

「そうだよ」

「なんで・・・アスランがいるの?

 ここ、どこ?」



薄暗くて、狭い。

なんで、こんなとこにいるんだろう。

それに、うまく動けない。

・・・無重力?



「アスラン?」

「憶えていないのか?」

「えと・・・。

 私、モルゲンレーテで・・・」



ああ、そうだ。

なぜか、ヘリオポリスの中で戦闘があったんだ。

みんなと避難所へ逃げる途中で・・・。



「思い出した?」

「うん。

 でも、ここはどこなの?

 みんなは?」

「すぐ、わかるよ」



そう言って、アスランは腕を伸ばしてハッチを開ける。

サァッと入ってきた光に、キラは眩しそうに手をかざし、瞬いた。



「さぁ、出るよ」



アスランはキラを抱き上げるようにして、モビルスーツから出る。

ハッチの上に乗り、キラをそっと立たせて腰に腕をまわした。



「ここ、は・・・」



されるがままのキラは、そこでやっと、自分がいる場所を理解させられる。



「ザフトの、艦の中?

 それと・・・」



キラは自分が今まで入っていたものを見上げた。



「あの時の、モビルスーツ?」

「ああ」

「なんで?

 イヤだって、言ったでしょう!?」

「キラ、待って」

「それに、それにみんなは?

 サイとトールは?

 どうなったの?

 まさか・・・?」

「キラ」



アスランが指をキラの口元に触れさせると、キラは口を閉じる。

だが声の代わりに、アスランを見上げる目が、キラの不安を訴えていた。



「落ち着いて、キラ。

 キラと一緒にいた2人も無事だよ。

 彼らも、ここに連れてきている。

 ああ、心配しないで。

 別にどうするってわけじゃない。

 ただ、あの場所は危険だったからね」



危険。

そう言われて、キラもあの時の状況を鮮明に思い出す。

外から入ってきたモビルスーツからの声が、かなり激しい戦闘が行われているようなことを言っていた。

そして警戒レベルが上がって、と。



「ヘリオポリスは?

 あそこには父さんと母さんがいるの」

「・・・わからない。

 俺達は、あの後すぐに脱出したからね」

「そんな・・・」

「待って、キラ。

 おばさん達はきっと大丈夫だよ。

 警報が鳴っていたから」

「そう、そうよね」



自分に言い聞かせるように呟くキラの手が、白くなるほど握られているのにアスランが気づく。

アスランはキラの頭を胸に抱き寄せ、その背を宥めるように軽く叩いた。



「大丈夫。

 心配いらないよ」



耳元で囁かれ、キラの体から段々と力が抜けていく。

その手が開かれたのを見て、アスランもゆっくりと腕を解いた。



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