誰がために−9


キラは女の子です


『おい、アスラン?』



アスランがキラの肩を抱いて歩き出したのに、ミゲルが不審そうな声を上げる。

キラは震えながら、アスランにされるままだ。



「アスラン?」



それでも戸惑いに名を呼ぶキラだったが、アスランはそのままモビルスーツへと近づく。

そして素早くキラを抱き上げた。



「ちょっ、な、なに?

 何するの?」

「連れて行く」

「・・・・・・・・・え?」

「おい、ちょっと待て、アスラン!?」



モビルスーツの上に立ったアスランに、ラスティが慌てて駆け寄る。

その肩に手を掛け、振り向かせた。



「どこに連れて行くつもりだよ!?

 まさか・・・」

「艦に決まっているだろう」



あっさりと言うアスランに、それまでどうしていいかわからずにただ見ていたサイとトールも焦った。



「待ってください!

 キラをどうするつもりですか!?」

「早く、避難所に行かないと!」



キラの身を案じる2人を、しかしミゲルの声が遮る。



『避難所は無理だぞ。

 警戒レベルが上がったからな』



***



「それで、どうしてこうなるんだ?」

「すみません」



不満そうなラスティに、横に立ったサイが首を竦めた。



「あ、いや。

 あんただって、巻き込まれただけなんだよな。

 悪い」

「いえ。

 あの、でも・・・。

 本当に僕らが行っても平気なんですか?」



サイが今いるのは、実はモビルスーツの中。

ラスティが操縦席に座り、サイはその横の狭い空間に邪魔にならないように立っていた。



「ああ、まぁ、不可抗力ってやつ?

 他にどうしようも無いしな」



ため息を吐くラスティに、サイは先ほどのキラの様子を思い返す。



「キラ、大丈夫かな・・・」



***



「ヴェサリウスって、どこ?」

「俺達の母艦だよ、キラ」



ぼかん。

・・・母艦?



「ザフトの戦艦のこと?」

「ああ」

「なんで?」

「ここは危険だからね」

「イヤよ!

 軍なんて・・・。

 戦争する艦なんて!」



アスランから離れようとするキラを、アスランはきつく抱きしめた。



「じゃあ、俺ともう会いたくないか?

 今の俺は、軍人だ。

 俺のことも嫌いなのか?」



キラの動きが止まる。



軍人・・・。

アスランが。

戦争も軍も嫌い。

嫌いだけど・・・っ!



「アスランを嫌うはずないでしょ!」



握った拳でアスランの胸をキラは叩いた。



「会えなくなって、いいわけないじゃない!

 そんなこと、聞かなくてもわかってるでしょう!?」

「なら、一緒に来るんだ」

「なんで、そうなるの?」

「今別れたら、次に会えるのはいつかわからないからだよ」

「そんな・・・そんなこと」

「事実だ」



行きたくない。

でも、アスランと会えないのもイヤ。



どちらも選べずに考え込んでしまったキラは、しかし突然、クタッとしてアスランの胸に倒れ込む。



「ごめん、キラ」



キラはアスランによって、気を失わさせられたのだった。



*** next

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