誰がために−6 | ||
キラは女の子です | ||
「1人、そこに残して、お前らの背後の階段で降りてくるんだ」 「1人・・・ですか?」 サイだけでなく、キラもトールも不安そうに顔を見合わせた。 別れて行動するというのが、この状況においてはいいのかどうか、と。 「逃げちまわないようにな」 「そんな・・・」 「待って、サイ。 あの! 私が先にそちらに降ります。 ・・・撃たないですよね?」 先ほどから、おそらくは他の建物が壊される音が微かに響いてきていた。 あまり時間に余裕は無いかもしれないと、キラは思う。 「おかしな行動をとらなきゃな」 「わかりました」 あの銃は怖いけど。 この方が早いわ。 「って、キラ!?」 「待・・・っ!」 キラが柵に手を乗せたところで、これから何が起きるか気づいた友人2人が慌てて手を伸ばすが・・・遅かった。 既にキラの体は宙に浮いていたのである。 *** 「な、な、な・・・何するっ!?」 少女が飛び降りるのを見て、ラスティは驚愕の叫びを上げた。 上に残された2人も何か喚いている。 そのまま身を翻し、ラスティの視界から消えるが、それどころではなかった。 「・・・怪我、無いな」 ラスティは、スタッと降り立った少女を唖然と見つめた後、とりあえずそう口にした。 少女がコックリと肯定してみせるのに、ラスティは大きくため息を吐く。 「あんた、コーディネイターだったんだな」 「・・・そうです」 硬い表情を崩さない少女に対し、しかしラスティは気が楽になった。 だよな。 あんなの、ナチュラルにはそうそうできることじゃないしな。 見た目も、良いし。 特に、あの紫色の瞳。 今見せた運動能力からすれば、ナチュラルだと言っても通らない。 だから、彼女自身が認めたように、コーディネイターなのは確かで。 地球軍にまったくいないという保証は無いが、その確率はとても低かった。 そして、ラスティの見るところ、少女の所作は軍人として訓練されたようには見えない。 「そうか。 じゃあ、あんた、地球軍の人間じゃないんだな」 それでもと一応確認するが、彼女の困惑した表情で、ラスティには充分だった。 「あの、ザフト軍の方・・・ですよね?」 「ああ。 俺も、こいつも・・・って、おい!?」 それまですっかりその存在を忘れていた自分の仲間が唐突に動き出し、ラスティが止めようと手を伸ばす。 が、それをスッと避けると、彼は警戒する少女をあっという間に抱き込んだのだった。 *** 「何するん・・・っ!?」 「・・・ラ」 「え?」 突然抱きしめられたキラは、当然抗議の声を上げて藻掻いたが、耳に触れた微かな声に、ふと動きを止める。 「キラ」 「え?」 「キラ、キラ。 良かった、キラ。 生きていたんだな」 「そんな、まさか・・・。 アスラン、なの?」 「そうだよ、キラ」 「嘘、ほんとに?」 キラの憶えている声とは、違った。 キラの耳に残る声は、もっとずっと高くて。 体ももっと華奢で。 だけど、こんな風にされて。 イヤじゃないわ、私・・・。 そうと思ってみれば、びっくりして声を上げただけで、体が密着されても嫌悪感を持たない自分にキラは気づいた。 背にまわった腕が緩められ、真正面から見た相手の顔は。 「ア・・・アスラン!」 記憶にあるよりも大人っぽくなったその顔に、昔と変わらない翠の瞳。 それをみとめて、キラの目から、涙がポロポロと零れだした・・・。 *** next |
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