誰がために−5 | ||
キラは女の子です | ||
「さて、どうする?」 「どうって・・・、行くしかないんだろ? また、見つからないように移動するしかないよ」 「いや、そうでもない。 どうやら守り側は劣性らしい」 サイの言うとおり、さっきよりも銃声が減っている。 「・・・うん、そうね。 無闇に動かない方が安全かもしれないわ。 ああ、でも・・・」 下を窺い見ていたキラが、不意に顔を背けて唇を噛んだ。 微かに震え、自分自身を抱きしめるようにする。 「なんだって、こんなことを」 簡単に、人が死んでいく。 それを目の当たりにして、キラが泣きそうな声を出した。 「すまない、キラ。 フレイとミリアリアを優先してしまった」 「そうだ、ごめん、キラっ」 「と・・・とんでもないわ。 当然のことだもの。 ミリィにも言ったけど。 サイやトールより身体能力は、私の方が上なんだから」 ふるふると首を振って否定するが、サイとトールの顔色は冴えない。 「だけど、キラは女の子だろ」 「そうだ。 コーディネイターだからって、精神的に違うわけじゃない。 本来ならこんなこと」 「いいの! 大丈夫だから、私。 少なくとも、ミリィやフレイがここにいるよりいいわ」 *** 「誰だ!?」 銃撃が止み、恐る恐る動き出したキラ達に、鋭い誰何の声が上がった。 ビクッとして立ち止まり、ゆっくりと声のした方を見る。 そこには、3人の方へと銃を構えた2つの人影があった。 「しまった、まだいたんだ・・・」 トールの呟きは他の2人にも同様で、つい気が急いてしまったことを後悔する。 それでもキラは素早く彼らと自分達の位置関係を確認した。 そして、結論は。 「撃たないでください。 私達はあなた方の敵ではありません。 民間人です」 それこそキラ1人であれば、逃げることも可能だったかもしれない。 だがもちろん、キラが友人達を置いていくはずもなく・・・。 キラは相手に届くように大きな声ではっきりと訴えた。 そうして両手を上げて、ゆっくりと手すりに近づく。 ・・・下にいる相手に、自分の姿が見えるように。 「トール」 「うん」 守るつもりだったキラに率先して動かれ、サイとトールは複雑な思いで肩を落とし、キラに続いた。 *** 「・・・女の子!? しかも、民間人って・・・」 声も、格好も、俺たちと同年代の女の子みたいだよな。 軍人には見えないし、ここの研究者とも思えないけど。 なんでこんなとこにいるんだ? ラスティは、ここにいるのは軍関係者ばかりと聞いていた。 情報が間違っているとも思えないが、彼女はそんな風に見えない。 彼女に並んで出てきた2人も、普通の少年達のようだった。 だが、確認はしなくちゃな。 それに、本当に民間人なら、逃がしてやらないと。 外ではザフト軍と地球軍との戦闘が続いている。 ここはラスティ達がいるから、攻撃されていないだけのことだった。 「おい! 敵じゃないってなら、降りて来い!」 手を上げたまま、困惑げに顔を見合わせる彼らに、ラスティはもう一度声を上げる。 「どうした? さっさとしろ!」 「すみません、俺たちここのことよく知らなくて! どこから降りればいいのか、わからないんです!」 言われてラスティもざっと見回すが、どうやら内階段しか無いらしかった。 ラスティがチッと舌打ちをする。 まずいな。 素性の確認できていないやつらを勝手に動き回らせるわけにはいかない。 かといって、放っておくわけにもいかないぞ。 *** next |
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