誰がために−4


キラは女の子です


「どうやら、避難所に入ってしまったみたいだ。

 ここの人達はみんなね」



壁の案内に従って、避難所の前で彼らが見たのは、定員に達したことを示すランプだった。



「でも、ここがダメだと・・・。

 あと何処にあるのかしら?」

「いっそのこと、モルゲンレーテから逃げた方がいいんじゃないの?」

「無理だよ。

 見てきたけど、ゲートにモビルスーツが立ってた」

「ねぇ、じゃあ、どうするのよ!?

 イヤよ、私っ。

 なんとかしてよ、サイ!」



自分で考えもせずに喚くばかりのフレイに、幾つかの冷たい視線が向く。

サイも出そうになるため息を飲み込んで、前向きな意見を述べた。



「とにかく、移動しよう。

 ここがダメでも、他があるだろうからね。

 ・・・工場区に行ってみようか」

「でも、危険じゃない?」

「ここにいても、危険だよ」

「そうね・・・。

 ミリィ、サイの言うとおりにしましょう」



***



建物のあちこちで崩れ落ちる音が響く中、キラ達がたどり着いた場所では、思いがけない光景が広がっている。



「なにこ・・・モガッ」



叫ぼうとするフレイの口を、危うくサイの手が塞いだ。

彼女以外は、息を呑んでいる。

騒いではいけない、という危険を回避する為の行動というよりも。

目の前の、彼らにとっては非現実的なその様相に咄嗟に対応できなかった。

だがやがて、目を逸らしてゆっくりと息を吐き出す。



「なんで、こんなところで戦争してるの!?」

「っていうか、あれ片方はザフト・・・だよな。

 相手は、なんだ?

 モルゲンレーテの社員ってことないよな?」

「双方、銃を持ってる。

 慣れた感じだから、非戦闘員とは思えないね」

「オーブ軍かしら?」

「いや、でも・・・。

 変じゃないか?

 モビルスーツっていえば、ザフト軍だろう?」

「そりゃ、ナチュラルには無理だって言うからな」

「だけど、あれ」



サイの指さす先には、固定されて横たわる、モビルスーツがあった。



「攻めてきてるザフトが持ってきたようには見えないよ」

「・・・そうね」

「うん、そう見える」

「いったい、何が起こってるんだろう・・・」

「わからない。

 わからないけど、こうしていても仕方ないわ。

 避難所はすぐそこみたいだから、急ぎましょう」



***



『5人!?

 無理だ。

 ここはもういっぱいなんだ。

 反対側に別の避難所がある。

 そちらに移動できないか?』



せっかく来たそこも、どうやら定員をオーバーしてしまうらしい。

言われるまま、もう一つの避難所とやらのある場所を見ると、やや距離があった。



上の通路には人はいないけど、流れ弾は飛んできてる。

あんなところ、ミリィ達には無理だわ・・・。



キラと同じことを、サイも思ったらしい。



「5人ではなく、3人ならなんとかなりませんか?

 女の子がいるんです!」



だが、それには沈黙が返った。

それならと、キラが口を開く。



「2人なら、どうですか?」

『・・・2人だけなら』

「開けてください。

 3人はあちら側へ行きますから」



息を吐いて、キラが皆を見回した。



「ミリィと、フレイはここに入って」

「だけどキラは!?」

「私は、平気。

 多分、サイやトールの方が危険よ」

「いいよ、俺達は。

 なぁ、サイ」

「ああ」

「だけど・・・」



その時、避難所の扉が開いた。

フレイが乗り込み、ミリアリアをキラが押し込む。



「また、後でね」



心配そうなミリアリアに、キラは笑顔で手を振った。



*** next

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