誰がために−3


キラは女の子です


「なに、今の!?」



大きく揺れ、室内にいた全員が身近なものに掴まり、不安そうに見回した。



「爆発事故か?」

「そんな・・・まさか。

 今は大きな工事はしてないはずでしょ?」

「だけど、他に考えられないだろう?」

「うん。

 無いとは言えないよね・・・って、また来た!」



口々に言う彼らを、もう一度揺れが襲う。



「きゃぁっ」

「ミリィ」



悲鳴を上げるミリアリアを、一番近くにいたキラが肩を抱いて庇った。

耳障りなほどの声を上げているフレイは、サイにしがみついている。



「ミリィ、キラ、無事か!?」

「ええ、大丈夫よ!

 大丈夫よね、ミリィ?」

「う・・・、うん。

 あ、ありがとう、キラ」



ぺたんと床に座り込んでしまったミリアリアの手を引いて立たせた。

トールが心配そうに2人の少女に駆け寄る。

サイはフレイを落ち着かせようとしていた。



「怪我は無いか、2人とも?」

「うん、平気。

 あ、キラは?

 さっき庇ってくれたでしょう。

 怪我しなかった?」



乱れた髪を掻き上げたミリアリアは、自分の背後を確認すると顔色を変え、キラに問いかける。



「ちゃんと避けたから、大丈夫」



にこりと笑いかけるキラに、ミリアリアも安心して詰めていた息を吐く。

先ほどミリアリアがいたところに、ロッカーの一つが倒れ込んでいる。

1度目の揺れで傾いていたのが、2度目ので耐えられなくなったのだろう。

目を見開いて硬直してしまったミリアリアを、キラが引き倒すようにして助けたのだ。



「でも、ほんとになんなんだろう、これ?」



誰もが、怪我人が出なかったことに安堵しながらも、不安を隠せない。



「様子、見てくるよ」

「ちょっと、トール!?」



止める暇も無く、さっさと行動に移したトールは、あっという間に部屋を出ていった。



「え、でも・・・。

 まずいんじゃない?

 この研究室以外に行くのは禁止されているんだもん」

「・・・でも。

 確かに、様子がおかしくないか?

 普通、もっと騒ぎになってもいいと思うんだが」



部屋から顔を出して辺りを窺うサイの言葉に、キラとミリアリアは顔を見合わせる。

2人はどちらともなくサイの横から同じように顔を外・・・通路へと出した。



「ほんとだ」

「誰も、いないね」

「な、変だろう?」

「・・・そういえば。

 今日の守衛さん、見慣れない人だったんだけど」

「そうだった?

 気づかなかったよ。

 ・・・キラ、は?」

「私も、気づかなかったわ。

 ほんと、ミリアリア?」

「うん。

 新しい人が入ったのかなって思ったんだけど。

 それにしては、あんまり新人っぽくなくて気になったんだ」

「関係・・・あるのかな?」

「ねぇ、サイ!

 何を話してるの!?

 早く、避難しましょうよ!」



フレイの声にはっとして見ると、怯えたようにフレイがサイの腕を掴んでいる。



「あ、だけど、トールが」

「戻ってきたわ。

 トール!どうだった?」



通路を駆けてきたトールは、ミリアリアとキラを押しのける勢いで部屋に入ってきた。

膝に手を置いて、荒くなった息を整える。



「大変・・・だ・・・。

 外で・・・モビルスーツが攻撃・・・してるんだ」

「「「モビルスーツ!?」」」

「って、ザフトの攻撃ってこと!?」

「嘘、なんで!?」

「馬鹿な。

 ここは中立国なのに?」

「まっ、待って、みんな!」



動揺する彼らを遮り、やっと普通にしゃべれるようになったトールがもう一つの事実を述べた。



「それだけじゃない。

 この建物に、俺達以外の人間が見あたらないんだ!」



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