誰がために−2


キラは女の子です


「確かにまぁ、フレイはそこそこ可愛い顔してるけど。

 キラには及ばないわね、絶対」



きっぱりと言い切るミリアリアに、キラは苦笑を浮かべる。

そう言うミリィも可愛いのに、と。

それに・・・。



「ミリィは、フレイを嫌いみたいだけど。

 私、嫌いじゃないよ」

「「えーーーーっ!?」」



ミリアリアとトールが叫んだ。

オープンカーだから良かったが、これが密室であったなら、キラの耳が痛くなっただろう。



「そんなに、意外?」

「決まってるじゃない!

 あんなにあからさまに嫌みを言われてばかりでさ。

 いくらキラが鈍感っていっても、変よ、それ」

「ん・・・、でも、はっきりしていて、いいかなって。

 別に何かされるわけじゃないし」



キラは月でのことを思い出していた。

アスランはいろいろと目立つ存在で、常に当然のように傍にいるキラには風当たりが強い。

それには、キラの両親がナチュラルであるということも関係していたのだが。

その頃と比べれば、フレイがキラを嫌っている素振りくらい、キラにはなんでもない。



フレイの気持ちもわからないでもないから・・・。



今頃アスランの傍に女の子がいたらと思うと、想像だけでキラは悲しくなった。

フレイのも、きっと同じなのだろう、と。



「サイのまわりに、別の女の子がいるのが、気になるんでしょう?

 フレイはゼミも違うから。」



今まで理由がわからなかったが、ミリアリアの言いようから、キラも気づいた。



「でも・・・、私、鈍感?」

「あ・・・、えっと・・・」



フレイの話よりも気になったミリアリアの発言を聞き返すと、ミリアリアが口ごもる。

・・・否定しないということだ。



「そっか、鈍感なんだ」

「あ、あの、でも。

 そこがキラの可愛いところだから!」

「・・・」



思わず無言になるキラを。



「ミリィ、フォローになってないって。

 可愛いのは、それだけじゃないから!

 キラは顔も性格も可愛いよ、ほんと!」

「・・・」



諫めるトールがさらに、念押しをしてしまい、しかも本人は気づいていない。



「えっと、その、・・・キラ?」



もちろん気づいたミリアリアが、俯いてしまったキラに恐る恐る呼びかけた。

お、怒った?と。

しかし、キラはやがて肩を震えさせ出す。



「キ、キラ?」

「ごめんね、キラ」



くっ。

くふふっ。

ふふふふふっ。



慌てる2人の耳を、キラの笑い声が打った。



「キ・・・ラ?」

「あはは。

 ごめん、怒ってないから」

「「・・・」」



今度はミリアリアとトールが憮然とする。

だがそれも、すぐに崩れた。

2人は楽しそうに笑うキラを見ながら、自然顔が綻んでくる。



「もう、キラったら」



***



「ヤダ。

 ちょっと、またフレイが来てるみたいよ」

「いつの間に追い越されたんだろうな?」

「そういう問題じゃない!」



ミリアリア達はキラと待ち合わせていたのだから、その間に直行していれば、フレイの方が早いに決まっていた。

それなのに呆けた返事をするトールに、ミリアリアが噛みつく。



「いい加減にして欲しいわよねっ。

 サイもサイよ。

 ここに部外者を連れ込まないでってのっ」

「言えばいいじゃんか」

「言ったわよ!

 だけど、あの女、ひとりで来るんですって。

 ほら、父親があれでしょ。

 だから、そのコネで入ってこれるみたいよ」



むくれるミリアリアを、キラとトールは必死に宥めるしかなかった。



*** next

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