キラ Ver.B−28


キラは女の子


「ほら、いい加減、機嫌直せって」



むすっとしたままのイザークの肩を、ディアッカが叩く。

キラが口をすべらした、アストレイとキラとの関連。

それが安全と引き替えに強制されたものだったという話と。

そして、キラがザフト・・・というよりもアスラン達にだが協力するということ。

伝えられた3人は揃って眉を寄せるようにして聞いていた。

それぞれに思うところはあるようだが、ニコルとディアッカの反応は概ね良好というところ。

イザークは、まぁ、予想通りだった。

なにもかも苛立たしいらしく、アスランに庇われて立つキラを怯えさせている。



「そうですね。

 話、聞いたでしょう?

 キラさんも被害者だったんです」



そりゃ、僕も諸手をあげて、とまではいきませんけどね。

そう心の中で続けたニコルだったが、びくびくと彼らを見ているキラへは、にっこりと笑いかけた。



「気にしないでくださいね。

 協力してくださるなら、僕は歓迎しますよ」



ニコルの切り替えは見事だった。

ニコルとて、キラへの遺恨が無いわけではない。

キラ自身をよく知るわけでもない。

けれど、キラはアスランを裏切らないだろうと思った。



アスランと、離れたくないから、か・・・。



それを口にしたキラの様子には、ニコルも呆れた。

・・・イザークはさらに感情を煽られていたけれど。

それもそうだろう。

赤らめた頬と、上目遣いの潤んだ瞳。

アスランの腕にしっかりとしがみついて。

皆まで言わずとも、キラがそうしたい理由など、誰にでもわかるというものだった。

そのキラをアスランが愛おしげに見つめて。



「キラさんには、僕らも学ぶところがあります」

「あ、いえ。

 そんな、たいしたことは出来ませんけど。

 戦闘以外でしたら、お手伝いさせてもらいます」



キラはザフトに入隊せず、しかし技術者として協力する。

それを他の3人に認めさせたのは、キラの能力の高さだった。

そう、イザークもそれは認めた。

ストライクやアストレイのシステムのこと。

また、これまでのことを詳細に聞き出し、彼らは驚愕したのだ。

彼らには出来ない。

戦闘中、モビルスーツを操縦しながら、そのシステムを書き換えることなど、出来ない。

普通なら、出来るはずがないこと。

特に砂漠でのことは、イザークとディアッカには驚異を与えた。

彼らは、あの戦闘で、結局まともに戦えずにいたのだから。

だから、余計にイザークはイライラとしているのだ。



***



「キラが待っていた情報が入ったよ」

「え?」



アスランの部屋で待っていたキラは、部屋に入ってくるなりのそれに、何のことかわからず首を傾げた。



「”足つき”・・・アークエンジェルは、無事にアラスカに入ったそうだよ」

「・・・・・・・・・そう」



アスランの言葉に一瞬息を止めたキラは、しかし目を伏せる。



「嬉しくないの?」

「まさか、そんなこと。

 嬉しいわ。

 ほんとよ?

 でも、そうね・・・。

 うん、嬉しいより、肩の荷が下りた、かな。

 無事だったのなら、それでいいなって思う」

「そうか・・・」



このザフトの基地内で、キラはもう何日も過ごしていた。

その間、ニコル達や、その他の技術者や整備員と話をするようにもなっている。

もともとキラの敵味方という意識は低かった。

それがこうして接する時間が増せば、複雑な思いを感じるのも当然だろう。

自分の気持ちを持てあましているらしいキラの頭に、アスランは手を載せた。



「キラ。

 嬉しいときは、素直に嬉しいって言っていいよ。

 俺に・・・俺達に遠慮はいらない。

 キラが、どんなに友達を大切にしていたか、知ってる。

 よかったね、キラ」

「・・・うん。

 うん、アスラン。

 よかった。

 心配、だったの。

 どうなったか、って。

 私、オーブでの仕事を放り出して来てしまったから。

 みんな、大丈夫かな、って」

「ああ、わかってる。

 キラの気持ちは、よくわかるよ」

「ほんと?」

「わからないはず、ないだろう?

 他ならぬ、キラのことだよ。

 俺にわからないわけがない」



きっぱりと言い切ったアスランを、キラは見上げ、不意に吹き出す。



「・・・笑うようなこと、言ったかい?」



笑われ、憮然とするアスランに、キラはなんとか笑いをおさめ、誤解を解こうと口を開いた。



*** next

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