キラ Ver.B−27


キラは女の子


「アスランと、離れる方が、イヤ。

 ここに、アスランのところにいさせて」



アスランの言う意味を考えていたキラだったが、やがてゆるゆると首を振った。



「プラントに、ひとりで行っても、することがないわ。

 ひとりきり、なんてイヤよ。

 それに、心配で・・・」

「プラントは、安全だ。

 地球上にはもう、戦火を避けられる場所は、無い。

 オーブとて、同じだっただろう?」



言われて、キラはモルゲンレーテに並んだ、モビルスーツ群を思い出す。

平和の国と呼ばれるオーブも、戦闘力を蓄えていた。

だからこそ、キラは・・・。



「でも。

 でも、アスランは?

 アスランはその危険にずっと身を置くのでしょう?

 それに、すぐっていつ?

 前だって、すぐまた会えるって言った。

 でも、3年間、会えなかった。

 会えたって・・・悲しかったわ。

 今離れて、次に会える保証なんか、ない」



キラ自身が、戦場に立っていたからこそ。

戦地にあって、死は常に隣りにあることをよく知っていた。

だが・・・。

黙ったまま見つめてくるアスランに、キラはうなだれる。



「・・・・・・・・・ごめんなさい。

 私、わがままを言っているわね。

 忘れて、アスラン」

「本当に?」

「うん、ちゃんとアスランの言うとおりにする」

「いや、そうじゃなくて。

 ・・・ここに、いたい?

 ここっていうか、これから向かうのは軍の基地だが。

 キラは軍の人間ではないから、自由は無いと思わないといけない。

 それでも?」

「アスランに迷惑が掛からないなら。

 それで、アスランと会っていられるなら。

 それで、いい」



***



「遅いぞ、アスラン!」



いきなり怒鳴りつけるイザークに、自分が怒られたわけでもないのに、ビクッと飛び上がったキラは、アスランの陰に隠れた。

キラと話し込んでしまったため、アスランがキラと手を繋いで格納庫へと現れた時には、約束を30分も過ぎている。

イザークでなくとも、怒りたくもなるというものだった。



「悪かった。

 すぐに作業に入る。

 キラ、おいで」

「う・・・ん」

「あ、待ってください、お二人とも」



ストライクに歩み寄った2人を、しかしニコルが引き留める。



「その前に、話を。

 ストライクにロックをしたのは、キラさんなんですか?」

「そうだ。

 ただ、俺達に対してじゃない。

 そうだな、キラ?」

「え、ええ。

 前に、フラガ少佐に言われて、付けたんです。

 私以外に、ストライクを動かせないようにしろって。

 一度は外したんですけど。

 地球に降りてから、また」

「では、解除できるんですね」

「はい。

 もう必要無いですから。

 すみません、うっかりしていて」



やることを決めたキラは、早かった。

さっさとコックピットに入り、すぐ後から登ってきたアスランを待たずに作業を始める。



「すぐ、終わるから・・・」



***



ストライクから降り立ったキラは、横のM1アストレイを見上げた。



これも、戦争に使われる・・・。



悲しげなキラに、アスランが気づく。



「キラ?」

「これも、ザフトで使うの?」

「性能が良ければ、おそらくな」

「思いの外、良いですよ」

「少しばかり、反応が鈍いがな」

「ですけど、イザーク。

 僕らが最初にGに乗ったときのことを思えば、格段の進歩でしょう」

「だよな。

 ありゃ、まともに動かなかったからなぁ」

「あの、反応が鈍いのは、ナチュラル専用だからなんです。

 テストパイロットの人は、ちょうどいいって言ってました。

 少し書き換えれば、動かし易くなります」

「って、これのシステム見たことあるんだ?」

「あ・・・」



キラは口を挟んでしまった。

自分の作ったシステムが、鈍いと言われて、つい。

それに気づいて、キラは手を口元にあてた。

さぁっと血の気の引くその様に、キラを見る視線が不審の色を浮かべる。

と、それを遮るように、アスランがキラの前に立った。



*** next

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