キラ Ver.B−26


キラは女の子


「居て、良いの・・・?

 ほんとに、平気?

 アスラン、困らない?」



アスランから与えられた希望は、キラの想いを揺さぶる。

いろいろな、想い。

ずっと。

ずっと堪え、自制していたキラの心。

アスランから差し出されたその手を、今度こそ。

本当の意味で、その手をとっていいのだろうかと。



「なんで、俺が困ると思うんだ?

 ずっと言っていただろう。

 ここに、来いって。

 俺のところへ」

「そう、だけど・・・でも」

「キラを悲しませたくない。

 辛い思いもさせたくない。

 泣かせたくも、ない。

 これからは、それができる。

 キラが俺とともにあるなら。

 俺はこうして・・・」



アスランはそっと腕を動かし、キラをその胸に抱き寄せた。



「守るよ。

 キラは何も心配しなくていい。

 キラの望みは、俺の望みだ。

 俺こそが、キラに傍にいて欲しい」



さっき会った、アスランの同僚達の反応からもわかった。

私を守ってくれようとすれば。

アスランに迷惑が掛かる。

きっと。



アスランの負担になってはいけないという理性を。



でも。

いいの?

ほんとに、いいのかな?

アスランに、縋ってしまっていい?



しかし、感情が凌駕していく。

キラの心は今、弱くなっていた。

いや、弱くなったわけではない。

ずっと独りで、必死に強くなろうとしていたキラの心が。

弱さを排除しようとしてきたその心が。

本来のものへ。



「アスラン・・・」



震える声を出したキラは、アスランの背に腕をまわす。

ぎゅっと、その服をを掴み・・・、泣き出した。



「怖かった・・・っ。

 怖かったの、アスラン。

 私、私・・・。

 どうしていいか、わからなくて。

 父さん達にも、会えなくて。

 会って、何を言えばいいのかって。

 やめたくて。

 やめられなくて。

 自分のしていることが、もうわからなくなってたの。

 みんなを、守りたかっただけだったの。

 なのに、なんで、戦争なんてっ。

 でも、私は裏切り者で。

 きっとアスランは私を嫌ってしまったと思ってたから。

 だから、だから・・・っ」

「キラ・・・」

「戦争なんかしたくない。

 したくないのに・・・。

 ずっと同じことの繰り返し。

 モビルスーツで、戦って。

 その整備をして。

 そんなこと、ばっかり。

 オーブでも!」



嗚咽混じりの訴えを、アスランは沈痛な面もちで聞いている。

キラの頭を撫で、背をあやすように叩きながら。

キラが想いを吐き出し終えるのを待った。

泣きたいだけ泣くのがいいと。



「アスラン、私、アスランといたい」



やがて、静かになったキラが、ぽつりと言った。



「アスランの傍にいたいの」

「ああ、俺も放さないさ。

 キラはプラントに行くんだ。

 いいね?」

「・・・うん」

「俺も、すぐに行くから」

「うん・・・・・・・・・て、・・・え?

 一緒じゃ、ないの?」



がばっとアスランの胸から身を離して、キラは不安げに見上げる。



「今回の騒ぎがあるし・・・。

 ストライクと、もう一機のモビルスーツの件もある。

 あれを片づけないと、俺の地球での任務が完了しないんだ。

 かといって、キラを基地に置いていたくない。

 場合によっては、戦闘に巻き込まれるかもしれないからね。

 イヤだろう?」



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