キラ Ver.B−25


キラは女の子


「だから、ほんとうは・・・。

 こんなこと、望んじゃ、いけないのよ」



小さく、自分に言い聞かせるかのようなキラ。

辛そうな顔で、だが涙を見せないその様子に、アスランは心を決めた。

キラの口を開かせよう、と。



「キラは何を望んでいるんだ?」



先に訊ねたときは、キラは言葉を濁していた。

その時は、話せるように待つつもりだったが・・・。



「俺には、言えないこと?

 俺は、キラの望みを叶えられないか?

 そんなに、頼りないかな、俺は・・・」

「そんなこと・・・っ」



わざと自嘲するように言えば、思ったとおりキラは否定する。

どう言えば、キラが反応するかをアスランはよく知っていた。



「辛い時に助けられなかったんだからね。

 キラが俺を・・・」

「だから、違うってば!」

「でも、言えないんだろう?

 ・・・まぁ、ずっと戦っていたんだからね。

 キラが俺を信用できないのも、仕方ないんだろうな。

 結局・・・自業自得ということか」

「違う!

 違うの、アスラン!」

「だが・・・」



強く否定するキラが視線を戻すのに、敢えて、アスランは顔を逸らす。



「アスランが、頼りないなんて、ない。

 信用だって、してる。

 違う、のよ・・・。

 アスランにも言えないんじゃないの。

 アスランにだから、言っちゃいけないのよ」



俺にだけ、言えない?



「・・・どういうことだ?」



低い声を出すアスランに、キラがハッとして口を噤んだ。

だが、今さらアスランは退くつもりは無い。

またも俯いたキラを、じっと見下ろした。



「俺には、話せない?

 ・・・キラ!」

「あ・・・・・・・・・違うの。

 だから、違う」

「さっきから、違うって、そればかりだね」

「だって、違うから。

 だから、お願い、怒らないで」

「じゃあ、話すんだ。

 キラは、どうしたい?

 何を望む?」



キラは黙ったまま、動かない。

しかしアスランは、辛抱強く待っていた。

アスランには、キラが言葉を迷っているのがわかるから。

話す気になってきているのが、わかるからだ。

果たして、キラは長い沈黙の後、顔を上げて、諦めたように口を開く。



「私が望むのは、アスランよ」

「俺?」

「・・・うん。

 アスランに会いたくて。

 顔を見て、声を聞いて。

 ずっと。

 ずっと傍にいたいな、って思う。

 こうして、アスランに触れて。

 そう・・・最期までいられたら、いいな。

 そうしたら、きっと・・・」

「・・・そんなことなのか?」

「そんなこと、なんかじゃないわ。

 だって、そんなこと許されるはずが無い。

 私は・・・罰せられるんでしょう?」

「させない。

 させるはずがないだろう、俺が!

 キラは、そんなことを考えていたのか!?」



意外な答えに、思わずアスランは怒鳴っていた。

これが、怒らずにいられようか?



「そんなこと、させるものか!

 キラも聞いただろう?

 キラの処遇は、隊長から任されている。

 俺が、キラをそんな風に扱うと思っていたのか?」

「・・・私は、それだけのことをしたから。

 アスランには、アスランの立場があるでしょう?

 私のことで、それを揺るがすことなんて、できない。

 でも・・・、でもね。

 アスランはそう言うかなって思ってたかな・・・。

 でも、だから。

 アスランには言っちゃいけないと」

「させない、絶対に。

 ・・・ごめん、キラ。

 キラの心に何か引っかかりがあるのは気づいていたんだ。

 それなのに、俺はそれを取り去ることができなかった。

 キラは、俺が守る。

 ずっと、俺と。

 そう望んでくれているならば。

 俺と、ずっと一緒にいよう。」



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