キラ Ver.B−24


キラは女の子


「・・・は・・・ぁふっ」



ふっと目覚めたキラは、ベットの上で上体を起こす。

そして口元に手をあてると、小さく欠伸をした。

そのまま瞬きを繰り返しながら、部屋の中を見回す。



・・・ここ、どこだっけ?



中途半端な仮眠で、キラはボーッとしていた。

そうして、キラはやっと、すぐ脇に立つ人影に気づいた。



・・・・・・誰!?



ベットの上で、反対側の端に素早く身を寄せて顔を上げたキラは、相手の顔を見て、その名を呟く。



「・・・・・・・・・アスラン・・・」

「どうした、キラ?

 寝ぼけたのか?」



キラの顔に浮かんでいた警戒の色が、自分を認めた途端に抜け落ちたその様に、アスランの頬が緩んだ。

嬉しげに、愛しげに微笑みかけてくるアスランに、キラの顔も呆然から照れくさそうな笑顔になる。



「そうみたい。

 ヤダ、もしかして、アスランずっと見ていたの?」

「キラが居ろって言ったんだろう?」

「そうだけどっ!」

「昔から、キラの寝顔は見慣れてるよ、俺は」



見慣れているから、平気というわけじゃないけどな。



心の中で呟いて、だがアスランはクスクスと笑ってみせながら続けた。



「よく、眠れたみたいだね」

「・・・もうっ。

 ええ、ええ、おかげさまでねっ。

 ほーんと、よく眠れた。

 ・・・久しぶりに」



久しぶり、ね。

あそこで、よく眠れなかったということか。

まぁ、当然だろうな・・・。



アスラン達が”足つき”を追っている時。

その最も妨げとなっていたのは、キラだった。

それは誰の目から見ても、明らかなことで・・・。

ならば、キラ自身が言ったように、自分がみんなを守ると気を張っていたのだろうから。

ずっと、本当の意味で心の安まる時間は、無かったのだろうとアスランは思う。

その要因の一つが、アスラン自身であることにも思い至り、悔やむ気持ちをキラに覚られないように心の奥へと押し込めた。



「アスラン・・・」

「キラ?」



スッと。

からかわれたと、むくれていたキラの顔が、どこか不安げに変わる。

と同時に、キラはアスランの傍へと移動した。

ベットに膝で立ち、アスランと体が触れ合いそうになる。

突然のそれに驚いたアスランが身を引こうとするのを、キラは両手でアスランの頬を挟むようにして止めた。

そのまま腕を引いたキラに、アスランが不自然な体勢ながらも倒れ込まないようにバランスをとる。



「本物、ね」

「・・・キラ?」



キラは、手を外してもアスランが顔を引いてしまわないのを確認すると、その指でアスランの顔をなぞった。



「暖かい・・・。

 これは、夢じゃないよね。

 ちゃんと、感触があるもの。

 それに、この目。

 綺麗な、翠の瞳。

 私の記憶にあるより、もっと綺麗。

 とっても、綺麗・・・」

「キラも、綺麗だよ」

「私の、目?」

「そうだね、キラの紫色の瞳も綺麗だ。

 だけど、キラ自身が、綺麗だよ。

 ・・・キラ?」



言葉の途中で俯いてしまったキラに、アスランは顔を覗き込もうとするが、近すぎて思うように動けない。



「私は、綺麗なんかじゃ、ない。

 私は。

 私の手は。

 数え切れない命を・・・」



震えだしたキラを、我慢できずにアスランは強引に上向かせた。

と、そのキラは一瞬アスランと目を合わせたものの、すぐに目を逸らす。



「俺だって、同じだ」

「違うっ。

 アスランは・・・違うわ。

 アスランは軍人で、戦う理由があったもの。

 私は、違う」

「なぜ?

 キラは自分と友達を守るためだったんだろう?」

「そうだけど、そうじゃない。

 守るだけなら、逃げれば良かったの。

 始めてしまったから、続けていただけで。

 もう後戻りはできないから。

 だから・・・」



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