キラ Ver.B−23 | ||
キラは女の子 | ||
「よかったですよ、アスラン。 タイミング良く来てくれて。」 「何があったんだ?」 いくらなんでも、イザークのこの突然の行動にはアスランも戸惑いを隠せない。 確かにイザークは激昂し易いけれど、今のこれは理由がわからなかった。 ・・・アスランに向かってくるなら別だったが、明らかにアスランはその目に映っていない。 イザークは、ディアッカとニコルに両肩を押さえられたまま、アスランの来た方向を見ていた。 「それが・・・」 「嬢ちゃんを問いただすってさ。 どうやら、よっぽと悔しいらしい」 「問いただす・・・。 キラを、か?」 アスランには、話がまるで飲み込めない。 キラが女であるからには、イザークもそう強く出ないと思っていたんだが。 いや、確かにストライクには思うところもあるだろう。 しかし・・・? 後でもう一度話をすると決めた以上、イザークが今、こんな風になるとはアスランは思っていなかった。 感情的に行動することの多いイザークだったが、その優秀さはアスランも認めている。 なぜ、突然? 「ストライクのシステムが、ロックされているんですよ」 「んで、俺達、手も足も出ないってわけだ。 イザークなんざ、俺達の前にさんざん挑戦したんだぜ? なのに、俺達の後にもまた同じ事繰り返して、な」 「ちょっと、頭に血が上ってるようです」 「・・・ロック?」 「そうです」 怪訝そうなアスランに、ニコルがはっきりと頷いた。 そして事の次第を、話して聞かせる。 「・・・というわけです。 ちなみに、オーブの機体はもちろん、なんともないですよ。 ちゃんと再起動しますから。」 「キラはそんなことをしてはいなかったが・・・」 アスランはキラと共にストライクに乗っていた時を思い出すが、そんな素振りは見えなかった。 「ですけど、アスランは出血で・・・」 「いや、キラはしていない。 それに、俺が降りて、すぐに続いてきただろう?」 「んじゃ、その前からそうしてあったってことだろ」 アスランとニコルの視線を受け、ディアッカは肩をすくめてみせる。 「他に無いだろう? 第一、ここに着いたときは動かせたんだろうが。 そう言っていただろ。 本当にその気なら、きっちりやるんじゃないか?」 「・・・そうですね、僕もそう思います。 それにキラさんは、そんなことに気を回せるほど余裕は無かったですよね」 アスランのことが心配で堪らない、という感じでしたからね。 「だとしたら、キラはなんのためにそんな設定をしたんだろう? 戦闘に出るたびに解除していたのでは、大変だったろうに」 「って、やっぱりキラさんがやったと思うんですね? アスランも」 「・・・他に、いないだろうからな」 キラの話では、あの艦にキラ以外にはコーディネイターはいないということだった。 いれば、民間人の少女が、軍の機密を任されることもなかったろう。 それに、アスランはキラの優秀さを知っていた。 本人に自覚が無くとも、キラは卓越した能力を有している。 そしてキラが、得意なプログラミングに関して、人任せにするとも思えなかった。 「ですが、ここの専門家にも、解除できないそうですよ。 もちろん、中身を消去するなら問題無いんですけどね」 この場合、それでは意味が無い。 ストライクという機体をあれだけ活用させたその中身を解析したいのだから。 「・・・いい加減、放せ」 黙っていたイザークが、低い声を発した。 彼を抑えていた2人は顔を見合わせ、そろそろと離れる。 「落ち着きました?」 「・・・」 「キラさんは、今さら逃げも隠れもしませんよ、きっと。 話をしたいなら、あまり脅かすようなことはするべきでは無いと思いませんか」 「女性には優しく、だろ」 「・・・」 システムがロックされているというのは、予想外だったな。 できれば、キラには充分に休ませてやりたかったんだが、こうなれば仕方が無いか・・・。 時間が経てばそれだけイザークの機嫌が下降するだろうことは、明白だった。 そうしてその様子を前に、キラが怯えてしまうだろうことも。 キラの立場が定まらない今、不安要素はできるだけ取り除きたかったアスランは、彼らにキラを連れて行くことを告げ、自室へと足を向けた。 その背に、ニコルが声を掛ける。 「少しくらい、いいですよ。 せめて1時間くらい、休ませてあげてからにしてくださいね。 疲れた頭じゃ、イザークに対抗できませんよ」 最後の一言にイザークの視線が向けられたが、ニコルは気づかないふりをしてやり過ごした。 *** next |
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