キラ Ver.B−20 | ||
キラは女の子 | ||
「話は、まぁ、わかりました。 それで・・・」 アスランに包まれたキラを見ながら複雑な思いで口を開いたニコルは、アスランから向けられた視線に、言葉を切った。 「アスラン・・・」 ニコルは大きくため息を吐き、ああ、もうっ、と呻く。 「アスラン、冷静になってください」 「俺は・・・」 「今のあなたは、感情的になっていますよ。 いつもであれば、僕らにそんな目を向けたりしないです。 キラさんが大事なら、落ち着いて話をしましょう。 今の話が本当だとすれば。 彼女の今後についても、相談するべきです。 ・・・僕らは、あなたの敵ではありませんよ?」 「・・・ああ」 ニコルに言われ、自分が彼を睨んでいたことを自覚したアスランだった。 目を伏せ、しかし自身でも感情が制御できないことに気づく。 理性では、ニコルもディアッカも、イザークさえ、今のキラをどうにかしようとはしないだろうと判断していた。 しかしアスランは、腕の中で震えるキラを髪一筋さえ傷つけたくない。 「ニコル、だが・・・」 「彼女が、・・・キラさんが地球軍に属していること。 それが、彼女にとって、それだけの必然があったのだということ。 すべてが、偶然から始まってしまったということも。 ある程度は理解できました。」 静かに述べるニコルに、ディアッカも頷きながら苦笑した。 「そうだな。 かなり端折った説明だったが、今に至る経緯はなんとなく、な。 納得いかない所もあったけどよ。 地球軍に、嬢ちゃんが利用されていた感は否めないし。 ・・・ああ、別に批判しようってんじゃないけどなぁ。 ま、俺は別に、女の子をいじめる趣味は無いから。 隊長がアスランに任せるってんだ。 好きにすりゃあ、いいさ」 一番の難問が残ってるけどよ。 にやっと楽しそうに続けたディアッカは、顎をしゃくって見せる。 それにつられてアスランとニコルは、そこに不機嫌も極まったようなイザークが床を睨んでいるのを認めた。 「イザーク、あの・・・」 躊躇いがちに声を掛けたニコルに、しかしイザークは応えない。 どうしたものかとニコルがアスランを窺うと、アスランはイザークをじっと見つめていた。 動きを見せない2人を見比べ、さらにディアッカに目をやったニコルは、顔を顰める。 ディアッカ・・・。 あなた、協力しようって気は無いんですか・・・? あてにならないディアッカに、ニコルは小さく息を吐いた。 「少し、時間を置きましょうか?」 キラを、ひたすらに庇い込むアスラン。 考えるのは自分じゃないとばかりに、状況を楽しむようなディアッカ。 そして、激情を抑える様子で沈黙するイザーク。 このままでは、話し合いにならなかった。 ディアッカはともかく、アスランとイザークは少し落ち着くのを待ったほうがいい。 そうニコルは判断する。 「キラさんも、休ませてあげましょう、アスラン」 「・・・ニコル」 アスランはイザークに向けていた顔を、ニコルと合わせた。 そこに、やや強張った、だが優しげな微笑みを見て、アスランは肩の力を抜く。 「ただ、ひとつだけ。 アスランに先に聞いておきますが」 「なんだ?」 「アスランは、彼女の話をすべて信じられましたか?」 ピクッと。 キラが一瞬震えるのを感じ、アスランは宥めるように一度ぎゅっとキラを抱いた腕に力を込めた。 「キラは、俺を騙したり、しない」 「では、キラさんがここで、僕らに対して不利益を成すことは?」 「ありえない」 「・・・そうですか」 きっぱりと言い切るアスランに、ニコルがクスッと笑いを漏らす。 と、その時、イザークが立ち上がり、足を踏み出した。 「イザー・・・」 「格納庫へ行く。 奪取してきた機体が放りっぱなしだ」 「おい、待て、イザーク。 俺も行く」 呼び止めるニコルを無視するように、イザークは出て行き、ディアッカまでついて行く。 ため息を吐いたニコルは、だが、イザークも頭を冷やす気になったのだと苦笑を浮かべた。 見れば、アスランも同様に、イザーク達の出ていった、今は閉じられた扉を見送っている。 「かなり、ストライクにこだわっていましたからね、イザークは」 「ああ。 ・・・ニコルは、どうなんだ?」 「さぁ・・・? 正直、僕も複雑なんですから」 ニコルはアスランと簡単に予定を決め、先の2人を追って退室していった。 *** next |
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