キラ Ver.B−19


キラは女の子


「アークエンジェルから降りた人達は。

 あの人達は・・・」



話ながら、もともと俯いていたキラは、さらに頭を下げ、自分の膝に顔を埋める。



「みんな、もう、いないの。

 守れなかったの。

 アスランと、しても。

 守ろうと思ったのに」

「キラ・・・」



アスランがそっとキラの頭に触れると、キラはピクッとし、一拍置いて顔を上げた。

そしてアスランと目が合うと、すぐに目を伏せる。



「あ、あの・・・。

 話、するんだったよね」



キラは目を閉じ、大きく息を吸って吐いて。

膝を抱えていた腕を解いて、足を下へ降ろした。



「キラ、辛いんだったら・・・」



後で、と。

そう言おうとするアスランに気づき、キラは首を振る。



「話さないと、いけないから。

 私、ちゃんと話さないと」



口に出さなくても、私のしたことが無かったことになるわけじゃないもの。

わかってるのに、バカね。

デュエルのパイロットがあの子を殺した、なんて。

私が、殺させてしまったのに。

巻き込んで。

あの子だけじゃない。

私はこの手で。

いくつもの命を・・・。



***



込み上げてくる気持ちを抑えるように両手を握りしめながら。

ヘリオポリスでの騒ぎから。

オーブでのことまで。

キラはすべてを、感情を交えないように事実を話した。

アスランも、他の3人も。

口を挟まず、黙って最後まで聞いていた。



***



キラの話に一番驚愕をしたのは、イザークだった。



こいつが、素人?

俺に屈辱を与えたストライクに乗っていたのが、素人!?



キラがあの時まで、民間人の学生であったことは、イザークにとっては信じがたいことである。

しかし。

確かにキラは、イザークの目にも軍人には見えなかった。

訓練をされたような人間には。

信じたくない、そう思うイザークに、さらに驚愕の事実。



あのシャトルに乗っていたのが、避難しようとした民間人!?

そんな馬鹿なことがあるか!



***



イザーク以外の、アスランを含めた3人も。

信じられない、信じたくない思いでキラを見つめていた。

そして同時に。

キラを取り巻いていた人物たちへの、怒り。

それはキラに対して好意的でないニコルや、はっきりと敵意を表していたイザークさえも。



***



「あの戦闘で、アークエンジェルが被弾して。

 オーブは、技術協力と引き替えに・・・」



そう言って口を噤んだキラへ、複雑な視線が向けられる。



「キラは、後悔している?」

「・・・わからない。

 何を後悔すればいいのか、わからないの。

 私はいつ、どうすれば良かったんだろう?

 いくら考えても、わからない。

 ただ・・・」

「ただ?」



キラの話が始まってからずっと横に座っていたアスランは、キラが組んだ両手を手のひらで包み込んだ。

優しく耳元で響くアスランの声に、キラも本音を漏らす。



「アスランだって、知らなければ良かったな、って。

 ヘリオポリスで。

 なんであんな偶然があったんだろう?

 知らなければ、辛くなかったのに。

 だけど。

 だけど、でも。

 アスランの声が聞こえて。

 アスランを思い出さないではいられなくて。

 アスランと戦いながら、でも嬉しくて。

 守らなくちゃいけないものがあるのに、そんな自分が・・・。

 自分が許せなくて。

 だけど、もう止められないから。

 せめてみんなを、友達を・・・っ」



段々と感情的になって自分でも何を言っているのかわからなくなってしまったキラを、アスランは抱きしめることで、その口を止めた。



*** next

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