キラ Ver.B−17


キラは女の子


「何から話せばいいか・・・」



迷うような口振りで視線を彷徨わせたアスランは、腕にしがみつくキラを見下ろした。

アスランの肩に頬を寄せ、俯いているキラの表情は見えないが。



「最初から、お願いします」

「いや、その前に。

 先に、確認したいことがあるんだけどよ」



キラがヘリオポリスにいたことは、既に話に出ている。

だから、そこからの話を聞きたいとニコルが言えば、ディアッカが待ったをかけた。



「嬢ちゃんの・・・、キラの素性。

 それを先に教えてもらいたいね」



結論を先に。

イザークやクルーゼの反応からすると、ディアッカとそしてニコルの2人の知らない事実があるはず。

まずはそれを明らかにしろ、と。

そうディアッカは言う。

確かに気になっていることも確かなので、ニコルもそれに同意した。

2人の視線が、キラへと向けられる。



「そう、だな。

 キラ、顔を上げて。

 みんなを紹介するよ」



アスランの優しい呼びかけに、キラはのろのろと顔を上げた。



「名前は、聞いたの」

「そう。

 でも、もう一度。

 右端から。

 ニコルはブリッツのパイロットで、俺達よりひとつ下。

 あとの二人は、俺達のひとつ上。

 歳は違うが、全員同期入隊だ。

 ディアッカは、バスター。

 イザークはデュエルのパイロットだ」

「デュエル?」



アスランの示す相手を見ながらも、目を合わせないようにしていたキラが、その一言に、イザークをまっすぐ見た。

キラの脳裏に、地球に降下するシャトルが爆発する光景が甦る。

キラの心に、あの時の想いが。



「デュエル・・・。

 あなたが・・・?

 あなたが、あの子を殺したの?」

「あの子?」



呟いたキラの声は小さく、耳元で聞いたアスランだけに届く。

アスランは言葉の意味するところがわからずキラを見たが、彼女はイザークへ視線を固定していた。



「あの子って?」

「ちっちゃな、女の子。

 私に、花をくれたの。

 折り紙の花。

 ありがとう、って。

 守ってくれてありがとう、って言ってたの。

 でも、でも・・・」

「キラ?」



わなわなと震えだしたキラの肩をアスランは掴み、自分に向けさせ視線を無理矢理合わせる。

しかしキラは、アスランを見ていなかった。

キラは、遠くを見るような目で、続ける。



「守れなかった。

 私、守れなかったの。

 守れたと、そう思ったのに。

 守りたかったのに。

 守らなくちゃ行けなかったのに。

 あと少しで地球なのに。

 なんで、あの子があんなところで死ななくちゃいけないの?」



そこまで言って、キラは首を捻ってイザークを見た。

少しずつ大きくなったキラの声は、イザークにも届いている。

しかしもちろん、ここにいる面々にキラのこの言葉の意味がわかるはずもなかった。

相変わらずイザークはキラを睨んでいるが、キラはもうそれに怯えることはなく、ただ聞きたいことを口にする。



「なんで、あの子を撃ったの?

 あの子は、あんなところで殺される理由なんて無かった。

 どうして?」

「・・・俺達は、戦争をしてるんだぞ。

 いちいち、理由があるものか」



吐き捨てるようなイザークの言葉に、キラはゆっくりと首を振った。



「あの子は、戦争なんてしてない。

 ただ、巻き込まれただけ。

 ヘリオポリスから避難して。

 やっと地球に降りるところだった。

 なんで、あの子が死ななくちゃいけないの?」

「キラ!」



アスランに強く揺すぶられ、キラは首を戻してアスランを見上げる。



「私のせい?

 私が、あの子を巻き込んだ?

 そう、よね?

 でも壊れていたの。

 放ってなんか、おけなかったの。

 ・・・それが、いけなかったのかな?」



答えを求めるような言葉を呟きながら、キラは気を失った。



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