キラ Ver.B−14 | ||
キラは女の子 | ||
「・・・アスラン、まだ動かない方がいいですよ」 「いや、そうもいかない」 忠告を聞き入れない治療を終えたアスランに、ニコルは仕方なさそうに、持ってきた彼の軍服を差し出す。 「怪我は、肩ですか?」 「ああ。 だから、動くのに支障は無い」 「出血量が問題ですよ。 せめて一晩、ここで休んでいてはどうですか?」 「俺のことはいい!」 「・・・アスラン」 突然口調を厳しくしたアスランに、ニコルが呆然とその名を呟いた。 アスランもすぐに我に返って、謝罪する。 「すまない。 気遣いは嬉しいんだが、今は」 「・・・いえ。 キラさんが心配なんですね」 低い声になったニコルを、アスランは訝しげに見やった。 その視線に気づき、ニコルはアスランの無言の疑問に肩を竦めてみせる。 「あなたが、こんなにいろいろな表情をするって、知りませんでしたよ。 でもこれで、僕の疑問のいくつかが解けました。 あなたの、あなたらしくないと思えた行動。 あれは、キラさんが”足つき”に乗っていたからだと。 キラさんは、地球軍に所属しているんですね」 ああ、責めているわけじゃないですよ、とニコルは手を振った。 「そうすると、彼女をどう扱うべきか、ちょっと困りますよね。 僕らとしては、捕虜というのが妥当でしょうけど・・・。 自分から来たようなものでもあるから、脱走兵かな?」 「ニコル・・・?」 いつものニコルらしからぬ言葉に、服を脱ぎかけた手を止めて彼を見る。 ニコルは、キラに良い感情を持っていないのか? 元来、穏やかな性質のニコルなだけに、アスランは意外に思った。 ニコルは、自分の味方をしてくれる。 そう思い込んでいたのだ。 「キラを受け入れられないか、ニコル?」 「今のところは。 僕は、彼女のことを知りませんから。 まぁ、ナチュラルとコーディネイターの確執を言い立てるつもりはありませんけど」 あなたと幼なじみとして育ったのなら、彼女もそんな考えでは無いとは思いますしね。 「ああ、そうだな」 まだ、事情をまったく説明してないからな。 ニコルがキラをナチュラルと思い込んでいることにアスランは気づいたが、きちんと場を設けて話をするぺきだろうと、とりあえず黙っておくことにする。 どのみち、イザークとディアッカも含めて、アスランは彼らを説得しなければならないのだ。 ニコルと話ながら身支度の整ったアスランは、扉へと足を踏み出してニコルに訊く。 「それで、キラはどこに連れて行かれたか知っているか?」 「・・・ええ」 「独房か?」 「いいえ。 彼女はあなたを置いて、逃げるようには見えませんでしたから。 僕らが預かってきましたよ」 「ニコル?」 「この部屋の前に、いますよ。 イザークとディアッカが付き添っています」 その答えに、ぎょっとしてニコルを振り返り、ついで慌てて医務室を飛び出した。 キラが、イザークと!? 状況から、キラは当然拘束されたものと、アスランは思い込んでいたのである。 いっそ、その方がキラの身の安全は保証されていたはずだったのだ。 キラ・・・っ! *** 打ち付けられた痛みに顔を歪ませたキラの首に手をあて、イザークは彼女をさらに壁に押しつけた。 「痛・・・っ」 「ならば、お前のしたことはどうだ!?」 苦しさに喘ぐキラは、呻き声を漏らす。 イザークの突然の暴力に唖然としていたディアッカは、キラのその声に我に返って、やめさせようとイザークに手を伸ばした。 「イザーク、おい!?」 やめろ、と。 そう続けたディアッカの手を、イザークが残る手ではねつける。 そして、イザークの手を外そうとしているキラの両手首を、その手で一掴みにした。 「自分が、ただの被害者だとでも言うつもりか? その手で、いくつの命を奪った?」 「・・・っ」 「お前が、守っただと? ああ、守ったとも。 俺達の同胞を殺してな!」 *** next |
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