キラ Ver.B−13


キラは女の子


「ちょっと、ここで待っていてくださいね」



アスランの様子を聞いてきますから、とニコルが一人、医務室へと入る。

するとディアッカが、医務室の扉を見つめるキラに近づいてきた。



「お嬢ちゃん、あいつとどういう関係だい?」

「きゃ・・・っ」



キラの間近に立ち、顔をずいっと寄せられ、キラは思わず仰け反る。

そのまま転びそうになったところを、イザークが支えた。



「気を付けろ」

「す、すみません。

 ありがとうございます」



礼を言いながらも、キラのイザークを見る目には怯えが浮かんでいる。

不機嫌そうなその表情と声が、キラをそうさせているのだが。

そんな目で見られては、イザークとて気分が良くない。

目の前で、一段と機嫌の悪化したイザークから、キラは素早くディアッカへと向き直った。



アスランの言っていたように、避けた方がいいかもしれない。

この人、怖い。

ニコルさんは優しい感じで、でも私のことあまり好ましく思っていないかなって思うけど。

こっちの人は、・・・あまり裏表の無い人みたいなんだけど・・・。



「あの、先にお名前、伺ってよろしいですか?」

「・・・あ。

 そういや、言ってなかったな」



悪い悪い、と軽そうな口調で話すディアッカを、キラは不安そうに見る。



「俺は、ディアッカ・エルスマン。

 そっちが・・・」



ディアッカがイザークを顎で示した。



「イザーク・ジュール。

 ニコルも含めて、アスランの同僚だ」

「モビルスーツの、パイロットなんですか?」

「そう、そう。

 クルーゼ隊の、エリートパイロット」



エリート、って自分で言うの?

それとも、ザフトではそういう言い方をするのが当たり前なの、かな?



「で、お嬢ちゃんのことはキラって呼んでいいよな?」

「はぁ」

「俺達のことも、名前で呼んでくれていいからさ。

 で、だ。

 最初の質問に戻るけどな。

 あんたはアスランの何?」

「・・・幼なじみ、です」

「ま、それも本当だろうけどな。

 それだけじゃないだろ?

 奴の恋人?」

「ち・・・っ」



恋人、と言われて、キラの顔が瞬時に赤く染まった。



「違いますっ!」

「今さら否定するな、って。

 バレバレだから」

「違うんですってばっ」

「そんな真っ赤な顔で違うってもなぁ」

「ですから・・・っ」



ほんとに、ただの幼なじみなのに。



「俺らの前で、キスしてたじゃないか」

「あれは・・・っ。

 あれは、アスランが・・・っ」



にやにやと笑うディアッカに、キラもいい加減無駄を覚り、口を閉じる。

どうもからかわれているのはわかるのだが、だからといって恥ずかしさは消えず、キラの頬は熱いままだ。



「そう、あのアスランがなぁ。

 あんな大胆なことする奴だと思わなかったね。

 隠密行動中に、恋人を攫うってのは、驚いだぜ」

「それは・・・っ」

「落ち着けって。

 あと、キラがヘリオポリスにいたってことが気になるね」



息を呑むキラを気にせずに、ディアッカは続ける。



「ずっと”足つき”に乗っていたんだ?

 なんで、民間人が降りなかったんだ?」

「・・・あなたたちが!」



話をするなと言ったアスランに従うつもりのキラだったが、咄嗟に言い返してしまった。



「俺達が?」

「あなたたちが追ってくるから!

 降りる暇が無かったんです!」

「ふーん?

 でも、地球軍に協力したんだ?」

「だ・か・らっ!

 あなた方が攻撃してくるから!

 私がやらなくちゃ、みんな死んじゃうじゃないですか!」

「あんたが、何をしたんだ?」

「そんなこと・・・っ」



言わずに置こうと思っていたことを口にする前に、キラはハッと我に返る。

口を噤んだキラは、しかし次の瞬間、壁に叩きつけられた。



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