キラ Ver.B−12


キラは女の子


「おいっ。

 お前はこっちだ!」



ストライクから降りたアスランは、すぐに医療班に連れ出された。

それに続こうとしたキラは、突然腕を掴まれ、ビクッとして背後を見る。

そこには、整備員らしき数人の男達が、銃を持って集まっていた。



「あ、あの・・・」



そのまま引っ張られて行きそうになったのを、高めの声が止める。



「待ってください。

 彼女はアスランのお知り合いです。

 手荒に扱わないで」



怯えてますよ、と言うニコルに、キラを囲んでいた男達は顔を見合わせた。



「ですが・・・」

「僕らが、彼女を預かります。

 皆さんは、これからお忙しいでしょう?」



事情を全く聞かされていない彼らにとって、キラは不審者である。

しかし、ニコルの言うことももっともで、彼らはこれから、奪取した2機への仕事があった。



「彼女は、アスランを心配しているんです。

 僕らに任せてください」

「そうそう。

 女の子を泣かせちゃいけないよ」



ニコルに遅れて近づいてきたディアッカが、キラの前に立つ。



「俺達が、引き受けるからさ。

 な、イザーク?」

「・・・ああ」



***



整備員達がそれぞれに散ると、ニコルはキラにニコッと笑いかけた。



「さ、僕らも行きましょう」

「ど、どこへ?」

「もちろん、アスランのところですよ。

 いろいろ、お話をお聞かせ頂きたいですしね」

「そう、いろいろと、ね」



優しそうなニコルと違い、キラはディアッカの言葉には含みを感じる。



でも、銃を向けられるより、良いわ。



モビルスーツの戦いには慣れてしまったキラだが、生身に向けられる銃は怖かった。

不機嫌そうなイザークも少し怖いが、怖さが違う。



「あ、名前をお聞きしていいですか?」

「は・・・い。

 キラ・ヤマト、です」

「僕は、ニコル・アマルフィです。

 キラさんはアスランとは・・・?」



キラはニコルと並んで通路を進んでいた。

すぐ後ろを、イザークとディアッカがついてくる。



「月で、幼年学校からずっと一緒だったんです」

「じゃあ、幼なじみなんですね。

 月から、オーブに移住したんですか?」

「あ、いえ・・・」

「ヘリオポリス、なんですね?」



口を濁そうとしたキラを遮り、ニコルがズバリと言った。

驚いて、キラはニコルを見る。

ニコルから、笑顔が消えていた。



「”足つき”に乗っていたんですね」

「・・・アークエンジェルって言うんです」



そう、彼らはあの時のアスランとキラの会話を聞いている。

だから、それは当然の推測だ。

今さら、キラが否定するようなことでも無い。



どこまで、話していいんだろう?



ストライクを降りる前に、アスランに言われた事をキラは思い返した。



***



ストライクが着艦し、そのコックピットを開けようとするキラの手を、アスランが止める。



「俺の居ない場所では、あまり話すなよ」

「でも、あのイザークさんとかって人には・・・」

「それでも、だ。

 ニコルとディアッカにも、キラがあの艦に乗ってたのは知られたと思うが・・・。

 あいつらは、多分キラに危険を及ぼすことは無いだろう。

 すぐには、だがな。

 イザークは・・・」



少し息を切らしながら言い淀んだアスランは、ちょっと首を振った。



「あいつは、できれば避けていてくれ」

「・・・って言われても・・・」



キラ自身で避けたりできるとは思えない。

だが、イザークが大人しくしているはずは、無い。



「イザークは、ストライクとそのパイロットを敵視している。

 2人きりになるのだけは避けるんだ」



真剣な眼差しのアスランに、キラは不安げなまま頷いたのだった。



*** next

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