キラ Ver.B−11


キラは女の子


『アスラン?』

「イザーク。

 少しだけ待て」



通信機から聞こえるイザークの呼びかけ。

それにアスランは、いつもどおりの口調で返した。



『そんな暇、あるわけないだろう!?』

「少し、だ。

 そのくらい、なんとかできるだろう。

 オーブもこんなところで大規模に攻撃してきたりはしない」

『その女は置いていけばいいだろうが!

 それだけ声が出るなら、少しくらい操縦できるだろう?

 危険を冒す必要は無い!』

「キラは連れて行く。

 翻すつもりは無い。

 隊長から任されたのは俺だ。

 従ってもらう」

『・・・っ!』



キラに、心を残させるわけにはいかない。

戻りたいと、言わせるようなことにはさせない。



『勝手にしろっ!』



耳が痛くなる程の声で怒鳴るイザークの声に、しかしアスランは動じない。



「協力、感謝する」



***



「待たせてごめん、アスラン」

「済んだか?」

「ええ」



頷いたキラは、だが背後からの声に振り返り、下を見た。

カガリが、見上げている。



「キラ!

 私はあいつらへの伝言なんか、引き受けないからな!」

「カガリ?」



大声で叫ぶその口調とは裏腹に、泣きそうなカガリの表情にキラは戸惑った。



「言いたいことは、自分で言え!

 今言えないなら、次に会った時でいい。

 いいか、絶対に自分の口で言え!」



もう会えないと思うから、カガリにだけでもと話したのである。

そのこともちゃんと話したのに、何故?とキラは眉を寄せた。



「おい、しっかりと聞けよ!

 自分で言うんだからな!

 だから、・・・死ぬなよ!」

「あ・・・」

「わかったな?

 絶対に、生きて、あいつらに話をしろよ!」



やっとカガリの言いたいことを理解したキラの胸に、熱いものが込み上げてくる。

死ぬな、と。

生きろ、と。

・・・最後まで諦めるな、と。

カガリに前向きな努力をしろと言われた気がした。

約束の出来ないキラは、答えずにシートに座り、ハッチを閉める。

そして、先に動き出したイザークのモビルスーツの後を追いかけた。



***



目的地・・・ザフトの母艦がストライクのレーダーに映る。

恐怖を感じずにいられないキラのレバーを握る手に力が籠もった。

と、ずっと必要事項しか口にしなかったアスランが、不意に口を開く。



「キラを傷つけさせたりしないよ」

「え?」

「まして、死なせたり、しない」

「アスラン・・・」

「俺が、守る。

 キラはずっと、俺と生きていくんだ」

「でも・・・」



アスランからの言葉がキラは嬉しかった。

嬉しかったが、だがそれをそのまま受け入れることは出来ないとキラは思う。



「でも、私は地球軍で。

 ストライクで、ザフトの人達を・・・」

「キラは巻き込まれただけだ。

 責められるべきは、キラを巻き込んだ人間だ。

 キラはただ、生きるために精一杯のことをしてきただけだろう」

「そんなの、言い訳にしかならないでしょ?」



私は、確かに人の命を奪ってきたんだから。



キラは首を振りながら、過去を思い出していた。

ストライクで戦ってきた、これまでを。



「キラは、じゃあ、死にたいのか?」

「そんな、そんなこと、は・・・」



無い、とキラは続けられなかった。

自分に、それを言う資格があるのか?と。

けれど・・・。



「キラ。

 キラが望むことは、なんだ?

 どうしたい?」

「私は・・・」



*** next

Top
Novel


Counter