キラ Ver.B−9


キラは女の子


「なんなんだ、あの女は!?」



キラに示されたモビルスーツに乗り込みながら、イザークは苛立つ。



泣いてばかりの弱々しい女が。

あのストライクの、パイロット?

その上、傷つけるなだと?

壊すな、と?

俺達が、戦争してるのを、わかっているのか!?



ともすれば怒鳴り散らしたくなる衝動に、奥歯を噛み締めた。

だが、そんな精神状態ではまずいと、深呼吸をひとつ。

シートに座り、OSを起動した。

ヘリオポリスの時を思い出し、OSを確認する。



動きは多少鈍そうだが・・・。

とりあえず、機動に問題は無さそうだ。



「さて、ディアッカとニコルを拾いに行かないと、な」



イザークの操るモビルスーツは、ゆっくりと立ち上がり、ストライクの起動を待たずに出口へと向かった。



***



「ディアッカ、ニコル、乗れ」

「あ、イザーク遅ぇよ!」



まず、手前のニコルをモビルスーツの手に乗せる。

人の身には高い柵も、モビルスーツにとっては一跨ぎ。

柵の向こう、ディアッカのいる側に人が集まっているのを見たイザークは、それらからディアッカを隠すようにモビルスーツを屈ませた。



「アスランは、どうしました?」



コックピットに入り込んだニコルは、すぐにイザークに問う。



「怪我は・・・」

「あ!おい、あれ!」



突然大声を出したディアッカに、ニコルはイザークへと向けていた目を、ディアッカの指し示す方へと向けた。

息を呑んだニコルの目に、白い機体。

それは彼に、彼らにとって見慣れたモビルスーツ。

ずっと彼らが追っていた、ストライクだ。



「なんで、あれがここから出てくるんだ!?」

「それはもちろん、ここにいるからですよ。

 ”足つき”がここに」

「・・・ああ、そりゃそうだけどよ」



冷静なニコルの指摘に、ディアッカは嫌そうに答える。

だがイザークはそれに反応せず、さっさとハッチを閉めた。

視界が遮られ、2人はイザークを見る。



イザーク、こんなところで戦いを始めたりするなよ?



イザークの暴走を警戒するディアッカ。

だがニコルは、別のことが気になった。



「イザーク、アスランはどうしたんですか?」



答えて頂いていませんよ?と、ニコルは低い声を出す。

そのニコルをちらっと横目に見て、ため息を吐いた。



「あれに乗っている」

「あれって・・・」

「あれに、な」



イザークの指は、モニターに映るストライクに向けられている。



「ストライクに?」

「アスランが?」



残る2人はちょっと目を見合わせ、口を開いた。



「あ、じゃあ、怪我は大したこと無いんですね?

 良かった」



彼らがモニター越しに見つめる中、ストライクは柵の向こう側で屈む。

ハッチを開き、そこからキラが顔を出した。



「あの女、連れてきたのか?」

「まぁ、アスランのさっきの様子なら当然でしょうけど・・・」



これって、誘拐とか拉致とか言うのでは?



「知るかっ!」



戸惑うディアッカとニコルに、不機嫌そうなイザークが吐き捨てるように言った。

そして通信回線を開くと、ストライクへと繋げる。



「何している、行くぞ!」

『待ってっ。

 少し・・・少しだけでいいですからっ。』

「怪我人がいるんだそ!」

『わかってます。

 一言だけ・・・っ。』



キラが既にハッチを開けてシートから立ち上がっているため、通信は音声のみだ。

それでもその声からは、彼女が泣きそうな気配を感じる。

ちっと舌打ちをしたイザークは、呼びかける相手を変えた。



*** next

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