キラ Ver.B−7


キラは女の子


「血が・・・っ。

 アスラン、血が!」



アスランの背後に立つことになったキラは、その肩から血の痕が未だ広がっていくのに気づく。



「手当をっ」

「時間が無い」

「用意も、無いな」



首を振るアスランとイザーク。

2人とも、何の荷物も持っていない。

もちろん、キラも。



「だけど・・・」



言いかけたキラは、アスランの手で口を塞がれた。

駆けてくる足音が響く。



誰か、来た?

どうしよう。

アスラン、怪我もしてるのに・・・っ。



アスランの手が離れ、キラは振り向いた。

と、その目が見開かれる。



な・・・にを?



アスランとイザークが、共に銃を取り出していた。

怪我をしているアスランは握っているだけだが、イザークは明らかに何かを狙っている。

それが、キラにもわかった。

考えてる暇は無い。



誰も、死なせたくない。

まして、アスランを。



「撃たないで」



通り過ぎざまイザークへと囁き、何気ない様子を装って、隠れていた物陰から出た。

唐突な行動に、アスランが止める隙も無く。



***



こちらへと、靴音高く駆けてくるのは、見覚えのある青年だった。

相手が気づく前に、キラから声を掛ける。



「どうしたんですか、そんなに急いで?」

「あ・・・と、ヤマト少尉」



全力で走ってきていたが、キラを見て足を緩めた。

荒い息を整えながら、近づいてくるキラの名を呼ぶ。

キラにとって彼は大勢の中の一人だが、ここでキラを知らぬはずもなかった。



「大丈夫ですか?」

「あ、ああ」

「何をそんなに慌ててるんです?」

「あの、チーフを知りませんか?

 呼び出そうとしたんですけど、応えが無くて」

「皆さん、食事に行かれましたよ。

 もう、私しか残っていないと思うんですけど」

「えーっ!?

 じゃあ、まるっきり反対じゃないか!」



外は緊迫した状況なはずだが、年若い彼には実戦経験は無いのだろう。

ただひたすら、慌ててしまっているようだった。

キラに答えをもらい、すかさず反転する。

一歩踏みだし、だがすぐに振り返った。



「なんか、侵入者がいるらしいんです。

 ヤマト少尉もみんなのいる所へ行った方がいいんじゃないですか?」

「・・・ありがとう」



心配してくれている彼に、キラは心から礼を言う。

しかし、そうするわけにはいかなかった。



「でも、私は残ります」



キラはストライクを指さす。



「あれに乗っている方が、安全だと思うので」

「ああ!そりゃ、そうですよね。

 わかりました。

 でも、気を付けてくださいね」

「ええ。あなたも、気を付けて」



今度こそ駆け出す相手を見送り、キラはゆっくりと振り返った。

その目に、ほぼ予想通りの光景が映る。



そうよね。

今までの会話でだって・・・

私が地球軍の艦に乗っていたのはわかっただろうし。

やっぱり。



イザークが、銃をキラへと向けて立っていた。



「少尉、だと?」



オーブ軍に、少尉という階級は無い。

ザフト軍にも。

それがあるのは、・・・地球軍。

この歳で少尉というのは、普通は無い。

あるとすれば・・・、例えば。



「お前、ストライクのパイロットか!?」



*** next

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