キラ Ver.B−6


キラは女の子


「いくぞ、アスラン!」

「ああ」



アスランはキラから腕を解くとその手を握った。



「キラ」

「あ・・・」



アスランのところへ行く?

行けるの?

行ってもいいの?

でもみんなを守らなくちゃ。

だけど。

アークエンジェルがもう攻撃されないなら・・・?



走り出すアスランに意識せぬまま従うキラの頭の中は、自分がどうしたらいいのかわからずに混乱している。

いやそれよりも。



行けるなら、行きたいのね、私。

・・・わかっていたけど。

考えないようにしてたのに・・・。



キラは前を行くアスランの藍色の髪を見ながら、自分の意志が崩れていくのを感じていた。



あんなに、行っちゃいけないって思った。

アスランとのことは諦めるって決めていた。

なのに。



キラの中で、理性を感情が凌駕していく。

こうしてアスランに手を引かれている今、キラにはアスランのことしか考えられなくなっていった。

と、不意に。



「キラ!」

「きゃっ!?」



アスランがキラを抱えて地に伏せる。

そしてキラの耳に銃声が、いくつか。

未だ混乱しているキラは、状況を読むだけの思考が戻っていなかった。

だから、覆い被さったアスランが立ち上がり、キラを引っ張り起こして再び走り出しても、ただ諾々と従うだけ。

そのキラを現実に戻したのは、建物の入り口。

先に着いたイザークがアスランへと放った一言を耳にした時だった。



「アスラン、撃たれたのか!?」



眉を寄せたイザークの声は抑えられており、決して大きくは無い。

それでも、キラにも充分に聞こえた。



「アスラン、怪我をしたの!?」



キラは先ほどの体勢を思い出す。



「私を、庇ったのね?

 どうして!?」

「俺がキラを庇うのに、理由なんかいらないだろう?」



キラへと宥めるように言ってから、アスランはイザークへと答えた。



「かすり傷だ。

 たいしたことは無い」

「バカか、お前は!?

 どこが、かすり傷だ?

 そんなんで、モビルスーツが満足に動かせるものか!」

「・・・なんとか、なる。

 それより急ごう」



***



「これが、平和の国か」



モビルスーツ・・・M1アストレイが並ぶその光景に、イザークが吐き捨てるように呟く。

それに、アスランはもちろん、キラも何も言わなかった。

言う必要は、無い。

キラですら、そう思っていたのだから。

だが、イザークがその内の一機に近づくのを見て、止めた。



「待ってくださいっ」

「キラ」



引き留めるキラの言葉に、イザークは応えない。

代わりにアスランがキラを宥める。



「俺達は・・・」

「違うのっ。

 それ・・・ううん、それだけじゃなくて。

 ここにあるほとんどの機体は、起動できないのっ」

「起動できない?」



聞き返すアスランに、キラは大きく頷いた。



「OSを入れ替える為に、すべて初期化してあるはずよ」

「それは・・・」

「そのようだ」



アスランの返事を遮るように、戻ってきたイザークがキラの言葉を肯定する。



「一から構築している暇は無いぞ。

 おい、女。

 動く機体は無いのか?」

「イザーク」



眼光鋭く見つめてくるイザークに怯えるように身を引いたキラを、アスランが背に庇った。



*** next

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