キラ Ver.B−5


キラは女の子


「ダメだ!」

「カガリ!?」



叫びながら、カガリが突然キラの腕・・・アスランへと伸ばされた腕にしがみつく。

キラは眼前で交わされる会話に気を取られていたのだ。

同じくそれを聞いていたカガリがどうするかなど考えが及ばず、唐突なカガリの行動に驚く。



「な・・・っ!

 い、痛いっ。

 カガリ、やめてっ!」



手のひらはアスランにしっかりと握られていた。

その状態でカガリに腕を掴まれて反対側にひっぱられる。

それが痛くて、キラは残る手でカガリの指を外そうとした。



「こいつらに付き合っていられるかっ。

 痛がっているだろっ。

 キラを放せよ!」

「ちが・・・っ。

 カ、カガリの手っ。

 カガリの手が痛いの!」



カガリはナチュラルで、キラよりも筋力は無いはずだが、彼女が砂漠で暮らしていたのは伊達ではない。

鍛えられた握力は、キラの細腕を掴んで放さなかった。



「キラは、そいつのを選ぶのか!?」

「・・・・・・・・・え?」

「そいつがキラの手を放せば済むんだぞ!」

「あ、でも・・・」



指摘され、おろおろとアスランとカガリを見比べながら、キラは否定できない自分に気づく。



だって・・・。

私は、アスランのことが。



放してと言いながら、キラはアスランと繋がれた手を放したくなかったのだ。

そんな自分に狼狽えながら、カガリから目を逸らす。

と、そのキラの手が自由になった。

カガリの手は未だキラの腕に掛かっている。

アスランが手を放したのだ。

キラは、はっとしてアスランを見る。



「アスラン、どうし・・・!?」



キラがカガリと言い争っている間にどう話を決めたのか・・・。

柵から離れたアスランと、そしてイザークとニコルは、ディアッカの手を借りて、柵を飛び越えようとするところだった。



「な・・・」

「すごいっ」



絶句するカガリと感嘆するキラの頭上を越え、3人が次々と地に降り立つ。

彼らの動きは素早かった。



「く・・・っ」

「え?」



目を丸くするキラが反応する暇も無く、カガリを柵へと押しつける。

呻くカガリを押さえつけ、柵の向こう側からディアッカがその両腕を拘束した。

ニコルが銃を取り出し、カガリへと突きつける。



「なにを・・・っ」



あまりのことに叫ぼうとしたキラの口を、アスランの唇が塞いだ。

すぐに離れたが、見開かれたキラの目は、間近に映る翠の瞳から逸らせなくなる。



「な・・・に、を?」

「好きだよ、キラ」



キスと共に、その背に巻き付けられていたアスランの腕に力が籠もった。



「今度こそ、俺と一緒に行こう。

 もう、キラがここにいる必要は無い」

「あ・・・、あ、だけ、ど」

「”足つき”・・・あの艦を、見逃してもいい」

「・・・ほんと!?」



アスランの言葉に、キスに動揺した心を隅に押しやり、勢い込んで話し出す。



「ほんとに、アークエンジェルを見逃してくれるの!?」

「あれに、キラの友人が乗っているんだろう?」

「ええ。

 ええ、そうなのっ」

「俺達が手を出さなければ、あれはアラスカへ無事に着ける。

 それなら、いいんだろう?」



オーブ近海を抜ければ、地球軍の勢力圏だ。

待ちかまえるザフト軍がいなければ、アラスカは目の前。

希望を示され、キラは一も二もなく頷いた。



「但し・・・」



真剣な目をして言葉を切るアスランに、何を言われるのかとキラが身構える。

そして続く言葉が、キラをまたも動揺させた。



「ストライクが残れば、だ。

 ザフトにとって驚異なのは、艦よりもあのモビルスーツだ。

 ストライクを手に入れられれば、俺達はあの艦を見逃すこともできる。

 もちろん、そのパイロットも連れて行くよ。

 キラが俺と来れば、俺がキラの望みを叶えてあげる」



私が、アスランと・・・?



*** next

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