キラ Ver.B−3


キラは女の子


「ヘリオポリスでの、あの時から。

 俺達は互いを認識していた」

「なら、お前はキラと知っていて・・・っ!」

「カガリ!

 やめて、カガリ。

 私だって、同じなの。

 知っていても、やめるわけにはいかなかったの・・・っ」



みんなを守れるのは私だけだったんだもの、と辛そうに続けるキラに、カガリの勢いが消える。

自分がみんなを守るなど、ともすれば傲慢ともとれる。

しかしカガリは、キラの戦いをこの目で見てきた。

アークエンジェルは、ストライク無しではここまでも来られなかっただろう。

そしてストライクは、キラで無くては動かせなかった。

動かせるものなら、マリューもフラガも、キラを戦わせたりするはずもない。

確かに、キラがみんなを守り続けてきたのだ。

それは、疑いようの無い事実であり、・・・この先も続くであろう現実。



「おい・・・」



その時、それまで黙って見ていたイザークが口を開いた。

突然の声に、皆の目がイザークへと向く。



「アスラン、その手を放してやれ」



せめて力を抜け、と言われ、アスランもやっとキラの手首を強く掴み過ぎていることに気づいた。

色の変わったキラの手を見て、慌てて力を抜く。

今なら、手を引くことが出来るが、しかしキラはそうしなかった。

手をアスランに預けたまま、寂しそうに微笑んでみせる。



「手を放して、アスラン。

 そして、早く帰って。

 ここは、アスランには危険でしょう?」



キラは確かに微笑んではいたが、その場の誰の目にも、泣きそうに見えた。



「会えて、よかった。

 もう会うことなんて出来ないと思っていたから。

 こうして直に会うことが出来て、嬉しかったわ」



きっと、これが最後だから。

この目にしっかりと焼き付けておこう。

アスランを。

翠の瞳、藍色の髪。

優しい、アスラン。

大好きな、アスラン。



「なぜ、俺がこのまま去るなどと思う?

 俺が、キラを置いて行けると思うのか?」

「私は、行けないわ。

 言ったでしょう?

 友達がいるの」

「俺より、大切なのか?」



声を低くしたアスランに、キラはちょっと笑う。



「違うわ。

 そんなはず、無いでしょう。

 私の一番大切なのは、アスランだもの。

 昔から、それは変わらないわ」

「それなら・・・」

「でもっ!」



キラは、口を開くアスランを強く遮った。



「だからって、友達をアスランと天秤にかけたりできないでしょう?

 どっちをとるかと言われれば、考えるまでもなくアスランなの。

 でも、・・・命は重いわ。

 彼らを巻き込んだのは私なんだもの」

「それを言うなら、キラを巻き込ませたのは、私だろう?」



意外な言葉に、キラとアスランはカガリを見る。



「私が、あそこにいなければ。

 キラが工場区に行くことは無かったはずだ。

 例え行っても、一人なら、シェルターに入れた。

 私が、私があの時・・・っ!」

「それも、考えたわ」



後悔も露わにするカガリに、あっさり頷くキラ。

当の本人に肯定され、カガリは居たたまれず俯いた。

そんなカガリから、キラは目を逸らす。



「あの時、カガリを追ったりしなければ。

 状況はまるで違っただろう、って。

 思わないはずは、無いでしょう?

 でも、ダメ。

 あったことを、無かったことには出来ないの。

 過去に戻ることは出来ないんだもの。

 いつだって、選んだのは私自身だった」



そう、私が、自分で・・・。

今さら、どうすることも出来ないの。



「だから・・・」

「キラ」



微かに震えだしたキラに、手首を掴むアスランが気づき、その名を呼んだ。

その声にキラはアスランに向いて、にこっと笑顔を向ける。

心配しないで、と。

だが、そう笑顔を作ったつもりが、顔が強ばってしまい、さっとカガリへ向いた。



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