キラ Ver.B−2 | ||
キラは女の子 | ||
「アスラ・・・っ」 キラがさらに急かす言葉を発する前に、カガリがキラの横にたどり着いてしまった。 言葉を飲み込み、キラは焦ったようにカガリを見る。 「お前っ! なぜ、ここにいる!? ・・・キラに何をしてる!?」 カガリは柵に両手を掛け、アスランへと噛みつくように訊いた。 言いながらアスランがキラの手首を掴んでいるのに気づき、さらに激昂する。 睨むカガリを、アスランも睨み返した。 「お前達こそ、何をしている?」 アスランは怒りを込めた静かな声でカガリに問いかける。 「オーブは、お前の父親は何をしている? 地球軍に味方し、自国の子供を見捨てるのか?」 「なんだと!?」 カガリ自身、この国の代表たる父に憤りを感じてはいた。 それでも、こうして他人に父親を蔑むような言い方をされて黙ってはいられない。 だが、言い返そうとしたカガリに、アスランは畳み込むように続けた。 「地球軍の艦から、民間人を降ろすことぐらい、出来ないのか?」 「それは・・・っ。 志願してしまったから、作戦行動中に除隊は出来ないとっ」 「言い訳だな」 自分でもそう思ったカガリは、ぐっと詰まる。 「アスラン、待ってよ。 そんなの、カガリに責任は無いのよ。 私達が、私が自分で・・・」 「泣いただろう?」 「泣く、って・・・おい、キラ?」 泣いたと聞いて、カガリが慌ててキラへ向き直った。 「そんな、泣いてなんか・・・」 カガリに心配そうに見られて、キラはぷるぷると首を振る。 否定するそのキラの仕草を、しかしアスランの声が無にした。 「目が、赤い。 声も少しかすれてる」 「そ、それは・・・っ」 そ、そうだったわっ。 もしかして、瞼も腫れてる!? 指摘されて、そんな顔をアスランに、とキラは顔を赤くする。 恥ずかしがっている場合では無いはずなのだが、キラにとっては・・・。 見つめ合う2人の様子に、カガリがはっとして口を開く。 「ちょっと、おい。 お前ら、知り合いなのか!?」 妙にアスランがキラの事情を知っているのだ。 カガリがそう考えるのも無理は無い。 いや、アスランの同僚達とて、カガリと同意見だ。 ただ、事態を把握しきれない状況で口を挟まずに様子を窺っているだけで。 「カガリ・・・」 「・・・・・・・・・ちょっと、待ってくれ」 困ったように、というより懇願するように自分を見るキラに、カガリが疲れたように肩を落とした。 キラは、こいつが誰か知ってるわけか。 で、それによって起こるだろう騒ぎは避けたい、と。 カガリは、うーっと唸り、頭に手を当てる。 どうしたものか、と頭を悩ませた。 本来なら、ここで警備員なりを呼ぶべきだろう。 しかし・・・、カガリはキラを泣かせたくなかった。 カガリも、キラが辛い思いをしていることは知っている。 知っていて、何も出来ない自分が悔しかった。 砂漠で出会った時よりは、今のキラは笑えるようになっている。 けれど、たった今、目にしたキラには今までにない生気を感じた。 それだけで、キラにとってアスランの存在が大きなものだとわかる。 だがこいつは、イージスのパイロットだぞ。 キラは、それも知ってるのか? ふと思い出した事実に、カガリは顔を上げた。 「キラ、こいつのこと、どれくらい知ってるんだ?」 「・・・どれくらい、って?」 「こいつは、あのイージスの・・・」 「知ってる。 知ってるわ、カガリ。 アスランも、私のこと、知ってるの」 カガリが真剣な目で問いかけてきた理由に気づき、キラは目を伏せながら答える。 互いに、知りながら戦っていたことを。 「いつから? いつから、知っていたんだ!?」 「・・・」 「初めからだ」 言っても仕方がないと口を開かないキラの代わりに、アスランが答えた。 *** next |
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