キラ ver.A−2


キラは女の子


「おい、どういうつもりだ?」



それまで黙ってキラとアスランの遣り取りを見ていたイザークは、低い声を発した。

それは、他の2人も訊きたいことである。



「なんだ、あの女は?」

「お知り合い、なんですよね」

「・・・」

「おい、アスラン!?」



キラを連れ出す算段をしていたアスランは、怒鳴るイザークにやっと我に返った。



「どういう・・・」

「キラ、だ。

 キラ・ヤマト。

 俺の幼なじみ」

「なんで、知らないふりをしたんですか?」

「・・・今は話せない」

「おい!?」

「話は、艦に戻ってからだ。

 キラが出てきたら、出発する」



きっぱりと言い切るアスランに、他の3人は顔を見合わせる。



「ちょっと待て。

 まだ任務は完了してないぞ」

「あの女に訊くにしても、知ってるとは限らないだろ?」

「そうですよ。

 僕たちは、あの”足つき”の所在を・・・」

「それは、もういい」



ニコルの言葉をアスランは遮った。

”足つき”はここにいる。

キラがここにいるのだから、それは間違いない。

もちろん、アスラン以外はキラの素性を知らないのだから、わかるはずもないのだが。



「行くぞ」



こんなところで、騒ぐのはまずい。

それがわかっている3人は、説明をしないアスランに焦れながらも、この場はアスランに従うことにした。



***



「アスラン!」



駆け寄ってきたキラを、アスランは抱き留めた。



「キラ」

「アスラン、アスラン・・・」

「もう大丈夫だから」

「うん」



ギュッとしがみつくキラの背を抱き、アスランの肩に伏せられた頭を優しく撫でる。



ああ、アスランだ。



頬に触れる柔らかな藍色の髪も、耳に触れる声の優しさも。

昔と変わらない。

込み上げる想いが、再びキラの目を潤ませた。



「行くよ」



うん、と頷きながらも離れないキラに、アスランは微笑みを浮かべる。

キラを首にしがみつかせたまま抱き上げ、車に乗り込んだ。



「出してくれ」

「ああ」



アスランの指示に返事を返したディアッカの声に、キラがビクッと震える。



「キラ?

 どうした?」

「この人達、は・・・?」



キラは腕を解き、アスランから体を起こして、車に同乗している3人をゆっくりと見回した。



そういえば、アスラン、一人じゃなかったんだっけ・・・。



「俺の同僚だ」

「同僚・・・、ザフトの人なんだ」

「・・・ご存じなんですね」



アスランの横に座った優しげな少年・・・ニコルが口を挟んだ。

キラはそちらに目を向け、ぎこちなく頷く。



「それなら、話は早いな。

 アスラン、さっさと訊けよ」

「イザーク!」



助手席から振り返って様子を窺っていたイザークの言葉を、アスランが名を呼ぶことで咎めた。

けれど、キラの耳にはちゃんと聞こえている。



「訊くって、何を?」

「”足つき”さ。

 ここにあるんだろうが?」

「地球軍の軍艦ですよ。

 キラさん、ご存じですか?」

「・・・!」



驚きに目を見張ったキラが、怯えるような目でアスランを見た。



「キラ、違う!」

「その為に?」

「違う!」

「勝つため?

 その為に、私を連れて来たの?」

「キラ!」



アスランから離れようと暴れ出したキラを、アスランがきつく抱きしめることで抑える。



「ヤダ、ヤダよ、アスラン!」

「違うと言っている!

 俺が信じられないか!?」

「だって!

 敵だって、言った!

 アスラン、私を敵だって言ったじゃない!」

「キラ!

 それなら、俺はキラの敵か?

 そう思うなら、俺を撃て」



言いながら、アスランはキラの手を、自分の持つ銃へと導いた。

キラの動きが止まる。



「撃つか?」

「・・・」

「撃てるか、俺を?」



撃つ?

アスランを?

私が?



今までの、モビルスーツ戦とは違う。

この生身の相手に、銃を向ける?

できるわけが無かった。



「・・・できないわ」

「じゃあ、キラは敵じゃない。

 そうだろう?」

「だけど・・・」



緩んだアスランの腕から身を起こし、アスランと見つめ合う。

言い淀むキラの両頬に手を添え、アスランはキラの目を覗き込んだ。



「キラはもう、何も考えなくていい。

 言っただろう?

 キラを利用したりしない。

 俺は、キラに傍にいて欲しいだけなんだ」

「でも・・・」

「好きなんだ。

 俺は、キラが好きだ」



好き、って・・・///

えっと、そういう意味、よね?

そ、それとも、違うのかな!?



「わ・・・、私だって、アスランを好きよ?」

「じゃあ、俺を信じて。

 もう、キラに辛い思いをさせたりしない。

 俺が、キラを守るから」

「アスラン・・・」



こくん、と頷くキラに、アスランはそっと触れるだけのキスをする。

途端、真っ赤になったキラは、両手で口元を押さえた。



「愛してる。

 ずっと、傍にいて欲しい」

「あ・・・、えっと・・・っ。

 プ、・・・プロポーズみたいよ、アスラン」

「そのつもり。

 返事は、キラ?」

「・・・///」

「キラ?」



恥ずかしくて俯いたキラは、しかし上目遣いにアスランを見る。



「私も、アスランといたい。

 ずっと」



***end

ラクス、無視しちゃいました
きっともう、破談済みなんですよ、ええ(笑)
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