望み−31


キラは女の子


「馬鹿なこと、言うんじゃない!」

「・・・っ、バカなことなんかじゃないもん」



自分の決意を口にしたキラを、アスランは怒鳴りつけた。

ビクッとしながらも、しかしキラは引かない。



「キラが戦えるはずないだろう!」

「・・・っ、直接戦うわけじゃないもん」

「戦争は嫌いだろう!?」

「そうよ、嫌いっ。

 でも、それじゃあ、アスランは好きなわけ!?」

「・・・っ!」



キラの切り返しに、アスランがグッと詰まった。



「でしょ?」

「だからといって、軍に入るなんて・・・

 認められるわけないだろう!?」

「なんでよ!?

 私、もう関わってるじゃない。

 なんで、ダメって言うの!?」

「駄目なものは駄目だ!」

「アスランが何て言おうと、入るもん!」



アスランばかりかキラまで興奮してしまい、二人して肩で息をしながら言い合っている。

そして2人はすっかり忘れているようだが、その周囲には、アスランの同僚達がいた。



「キラが軍に入るってのは、賛成できないな」

「それは、そうですよ」



騒がしい2人から離れてミゲルが言えば、ニコルも頷く。



「だけど、それってキラが決めることだろ?」



楽しそうにキラとアスランを見ながら、ディアッカは至って気楽に述べた。

イザークは眉を寄せながら、黙って2人のやりとりを見ている。



「確かに、そうなんですけど・・・」

「果たして、キラがどの程度の覚悟を持っているかだな」

「ええ、それはかなり不安が残ります」



沈鬱そうに頷き合うミゲルとニコルに、ディアッカはため息を吐いた。



「まぁな、今まで中立国で暮らしていたんだからな。

 戦争ってものを理解しているとは言い難いとは思うさ。

 けど、な。

 頭っから否定するのもどうよ?」

お前ら、過保護じゃねぇか?



そう言われ、ミゲルとニコルは顔を見合わせる。



「そうか?」

「そう、かもしれません、けど・・・」

「ま、俺達が賛成しようと反対しようと、キラは気にしないだろ」

「う・・・」

「それは、確かに・・・」



彼らが彼らなりにキラの今後を心配しているうちに、キラとアスランの言い合いは、ちょっと論点がずれてきていた。

本人達は至って本気だろうと思うのだが。

なんにせよ、2人が彼らの意見を必要としていないのは明らかだった。



「じゃあ、アスランは私といるのイヤなの!?」

「そんなわけないだろう!?

 キラと会えるのを、ずっと待っていたんだぞ!」

「なら、なんで連絡くれなかったの!?」

「キラこそ、黙ってヘリオポリスへなんか!」

「アスランが先に音信不通になったんじゃない!

 どうやって連絡しろってのよ!?」

「・・・っ、そんな話、してるんじゃない!

 キラは、ヘリオポリスに戻るんだ!」

「イヤ!

 私はここにいるの!」

「キラはわかってないんだ!」

「・・・っ、わかってないのは、アスランだもん!」



言った途端、キラの目に涙が浮かんだ。

それを見て、さらに口を開こうとしていたアスランが言葉を飲み込む。



「私、ちゃんと考えたもん。

 戦争なんて嫌いだし、怖いけど。

 でも、でも・・・っ」



キラは、零れてきた涙を手で乱暴に拭った。



「アスランはなんで軍人になったの?」

「え?」

「答えて、アスラン?」

「・・・大切なものを、失いたくないからだ」

「それは、何?」

「・・・」



顔を背けたアスランに手を伸ばし、キラはアスランの目を覗き込む。



「私も、同じ。

 大切なものを守りたい。

 ねぇ、私がアスランを守りたいって思ったら、いけないの?」

「キラ・・・」

「それは、ここにいたら、守るより守られてしまうだろうけど。

 でも、私でも、役に立つことだってあるんだもん」

「・・・キラには、安全なところにいて欲しいと思ってはいけないのか?」

「それって、アスランにとって私が大切だってことなんでしょ?

 とっても嬉しい。

 だけど、どこにいても、絶対に安全なんてない。

 現に中立国のコロニーで、私は戦闘に巻き込まれたじゃない。

 ここで別れたら、二度と会えないかもしれない」



そんなの、我慢できるわけない!



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