望み−25


キラは女の子


「まったく、キラは目が離せないね」

「・・・ごめん」

「いや、俺がちゃんと口に出して注意しておくべきだったんだ」



キラと目を合わせたアスランは、ふっと笑う。

やっと笑顔を見せてくれたアスランに、キラはもう一度謝った。



ほんとうに、キラは変わらない。

その場その場の思いつきで行動してしまうのも。

謝りながら、泣きそうなその顔も。



アスランは体ごとキラに向き直る。

そして両手を伸ばし、キラの両頬に当てた。



「アスラン?」



我ながら、よく3年も会わないでいられたものだ・・・。



「あの・・・」



アスランに顔を寄せられ、キラは戸惑いを浮かべる。

その警戒の無さが、アスランは笑みを誘った。



手を握っただけで、赤くなってたのにね。



キラがアスランを意識しているのは、アスランにも伝わっている。

まあ、まるっきり顔に出ているのだから、わからないはずもなかった。

ただキラの中で、異性としてのアスランと幼なじみのアスランとが、キラの反応を一貫性の無いものにしている。

今のキラは、自分を心配してくれている幼なじみとして見ているのだろう。



だけど。

俺はもう、昔と同じようにはできない。

キラを、ただの幼なじみとして見ることなど。



「好きだよ」



言いながら、そっと唇を合わせた。

最初は、軽く触れるだけ。

顔を離し、キラの目を見開いたその表情に満足して、もう一度。

キラの背に腕をまわして抱き寄せる。

驚きで反応できないらしいキラを仰向かせて少し開いた唇に、アスランの舌が差し入れられた。

と・・・



「痛・・・っ」

「ご、ごめんっ」



口元を抑えたアスランに、キラは反射的に謝る。

唐突に我に返ったキラが、焦って口を閉じたのだ。



「だ、大丈夫?」



大丈夫って・・・

ほんとに、キラは・・・

キスされたって、わかってるのかい?



心配そうに見上げてくるキラに、アスランは笑いが込み上げてくる。



「ね、ねぇ、アスラン?」



笑いを堪える様子が怒っているように見えたのか、キラが慌てていた。

そんなキラを見て、アスランはつい、笑いが漏れる。



「ア、アスラン・・・」



くすくすと笑うアスランを困惑げに見つめながら、やがてキラは、先ほどのキスをやっと思い出した。

途端、キラの顔が真っ赤になる。



「もう、アスランっ。

 何、笑ってるの!?」

「キラが、可愛いからだよ」

「ちょっ、待って!」



もう一度唇を寄せると、今度はキラは両手を上げて防ぐようにした。

アスランが動きを止めると、キラは微妙に後じさる。



「な、なんで?」

「イヤ?」

「な、なにが?」

「キス」

「キ・・・っ」

「嫌い?」

「そ、それは・・・っ」

「俺のこと、嫌い?」



恥ずかしさやらなにやらで、上手く返答出来ないキラだったが、さすがに最後の質問には、首をブンブンと横に振った。



「そう。じゃあ、好き?」

「・・・っ」

「俺は、キラが好きだ。

 キラが欲しい」

「あ、あの・・・っ」

「うん?」

「そ、その・・・っ」

「なんだい?」



キラが赤くなって焦る様子が可愛くて、アスランは楽しそうに問う。

キラも冷静であればそれに気づいて怒っただろうが、今のキラには無理だった。



「す・・・っ」

「す?」

好き。



上目遣いにアスランを見上げながらの小さな声は、もちろんアスランに届く。

その瞬間のアスランの笑顔に見とれたキラは、もう一度アスランに抱きしめられていた。



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