望み−24


キラは女の子


「アスラン・・・?」



自分の背にまわされた腕が解かれ、キラも腕の力を抜いた。

アスランはキラの横に腕を立て、上体を起こす。

キラの上に掛かっていた重みが消え、斜めに覆い被さったアスランとキラの目が合った。



「アスラン?」



苦しげなアスランを見上げ、キラがもう一度、心配げに呼びかける。

それに応えるように、片手を上げ、キラの頬に触れた。



「暖かい・・・」

「・・・?」



何を言われているのか解らず、キラは瞬く。

次にアスランは、その手を滑らせキラの胸に当てた。



「ア、アスラン!?」



あまりのことに、さすがに真っ赤になったキラが叫ぶ。

びっくりしすぎて、硬直してしまい、身動きがとれなくなってしまっていた。

そして、さらにアスランは手をキラの横につき、手の代わりに頭をキラの胸へと伏せる。

胸・・・、心臓の上に耳を当てた。



「動いている・・・、生きてる」

「も、もちろんよ」



もう一度起こされたアスランの顔は、先ほどよりは穏やかになっている。



「心配、したんだ・・・、キラ」

「し、心配?」

「君に、何かあったらと思うと・・・」

「な、何かって?」



アスランは、キラを見下ろしながらゆっくりと話出した。

キラの目を見つめながら。

しかしながらキラの方は・・・



し、心臓が飛び出しそう。

もう、もう、アスランってば、なんなのーっ?

む、胸なんか触るからっ。

意識しちゃうじゃないっ。



アスランの表情から、今のアスランに所謂その気が無いのはキラにもわかる。

だが、それとこれとは、別。

恥ずかしくて、キラはうまくアスランと話が出来なかった。

アスランの方も、自分の気持ちに手一杯で、そんなキラの様子には気づけない。

淡々と、キラに話しかけた。



「宇宙は、危険なんだ」

「そ、そうね」

「だから、守らなくてはならないことがある」

「う、うん」

「キラは、それを無視したんだ。

 わかってるか?」

「あ、えっと・・・?」



ずいっと触れんばかりに近づけられたアスランの顔に、キラの思考がうまく回らない。

ますますキラの顔に血が上ってきた。



「パイロットスーツも着ないで、宇宙に出るなんて!

 何かあったら、どうするんだ!?」



答えないキラに、焦れたアスランはとうとう怒鳴る。



「で、でも・・・っ。

 ミ、ミゲルさんに、ストライクに乗せてきてもらった時だってっ。

 こ、このまま、だったわ・・・よ?」



焦って言い訳しようと口を開いたキラだったが、アスランの強い視線に、言葉が段々と弱くなってしまった。



「そういう問題じゃない!

 それは、非常時の事だろう?

 ・・・まさか、デュエルやバスターにもそのまま乗ったのか?」

「ま、まさか!

 それはないわ、うん。

 ちゃんと、スーツを用意してくれたから」

ちょっと大きかったけど・・・。



そこまで聞いて、アスランはキラから目を逸らし、再び上体を起こす。

今度は、キラの上からも退いた。

大きくため息を吐いたアスランに、キラも起きあがる。

アスランの視線が外され、キラも少し落ち着いた頭で、今言われた事をもう一度振り返った。

そしてやっと、アスランの言いたいことを理解する。



「ごめん、アスラン」

 

キラは、立てた膝に顔を伏せるアスランに、謝った。

アスランはキラを怒っていたわけじゃない。

いや、それもあるのだろうが、たぶん・・・

目の前で防げなかった自分に、怒っていたのだ。



「私、考えが足りなかった。

 もう、二度とこんなことしないから。

 だから、・・・こっちを見て」



それでも顔を上げないアスランに、キラはベットに置かれたアスランの手に、自分の手を重ねる。

そして額を、アスランの肩へと押しつけた。

ぴくっと、アスランの肩が揺れるのがわかる。



「ごめんなさい」

心配かけて・・・



*** next

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