望み−22


キラは女の子


「アスランはトリィをよろしくね?」



キラはアスランの隙をついて、イージスのコックピットからアスランを押し出した。



「ちょ、待て、キラ!?」



アスランが慌てても、もう遅い。

無重力の格納庫内で、一度ついた勢いはどうしようもなかった。



「ごめんね、アスラン」



イージスのシートに座ったキラは、遠ざかっていくアスランに小さく謝る。

・・・いたずらっぽく笑ったままのキラの声が、アスランに届くわけもなかったが。



「さ、始めなきゃね・・・」



呟きながら、キラはイージスのハッチを閉じる。

そして、既に起動している機体を動かし、カタパルトデッキへと移動させた。



***



ストライク他、ガモフに収容されているG3機同様、ヴェサリウスのイージスとブリッツもキラがシステムの書き換えをする。

それは、ここに残るための条件だった。

キラとしては、アスランの傍にいられるのが一番の希望で、得意のプログラミングをすればいいのだから、願ってもない。

部屋で2人きりというのが緊張するので、やることやらなくちゃ、と言って、ちっとも仕事に行こうとしないアスランを、キラが引っ張ってきた。

で、ここでキラが失念していたことが、一つ。



イージスをいじるってことは、アスランと2人きりってことじゃないの。

私って、バカ・・・



パイロットに使い易く調整する以上、そのパイロットと共に作業しなければ意味がない。

狭いコックピットの中、キーボードを叩くキラを、アスランが触れんばかりの近さで見つめてくるのは、キラの心臓に悪かった。



お、落ち着かないよ・・・



いつもならしない、タッチミスを繰り返し、このままではまともに進まないと判断したキラは、アスランに、離れていて欲しいと伝える。

が・・・



「なぜだい?

 昔はそんなこと言わなかったじゃないか」

「む、昔は、昔よ。

 見られていると、緊張するのっ」

「何言ってる。

 キラの集中力は知ってるさ。

 こと、プログラミングに関しては、ね」

「・・・」



アスランの言うとおり、いつもならそうなのだ。

誰が見ていようが、気にもしない。



アスラン以外なら、平気なんだけどっ。

そんなこと、言えないしっ。

っていうか、理由を聞かれたら・・・



アスランを好きな気持ちに嘘は無いし、アスランもキラを特別に想ってくれていることはわかっていた。

しかし、やはり告白というか、好きと言うのは勇気がいる。

ほんとのことを説明をせずに、この場をなんとかしたかった。

キラはちょっと考えて、アスランに提案する。



「ねぇ、アスラン。

 これ、動かしてみたいんだけど」

「キラがかい?」

「うん、そう。

 この前もそうだったんだけど・・・

 機体によって、違いがあるんでしょ?

 やっぱり自分で操縦してみるのとしないのじゃ、ね。

 いいでしょ?」

「しかし・・・」

「ちょっとだけ、ね?」



アスランが考えるようにキラから目を逸らした瞬間、キラは笑みを浮かべてアスランへと手を伸ばした。



***



「一人でなんて、許してくれるはずないもんね。

 でも、アスランと一緒じゃ意味ないし。

 とにかく、やることやらなくちゃね」



イージスで宇宙へと飛び出したキラは、いろいろな動きをさせていく。

思い通りにいかないところは、プログラムに手を加えていった。



「手早く、済ませないと・・・」



***



「アス・・・」



キラは自分の腕を掴んだアスランを呆然と見つめる。

コックピットを出たキラの前に、厳しい顔つきのアスランが立っていた。



「アスラン、あの・・・」



話しかけようとしてキラに構わず、アスランはキラを格納庫から連れ出す。

強く掴まれた腕が痛くて、キラは顔を顰めるが、アスランは振り向きもしなかった。



「アスラン・・・」



お、怒ってる?



*** next

Top
Novel


Counter